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孤独
しゃん、しゃん。
もてなせおどれ、神の癒しの
誰そ彼旅館はさあどこだ
「…生きてるか?」
「生きてるな」
「死んでいるだろう」
上から声がする。
さわさわと私の頬には柔らかい草の感触。
うっすら目を開けると三つの頭に一つずつ目がのっかった妖がいた。
私はこういうのには慣れているが…普通の人なら悲鳴を上げていたところだろう。
「生きていますよ」
声を出しながら上半身をゆっくりあげると、逆に妖がひゃっと声を上げ、一つの頭に一つずつしかない目をきょろきょろさせ始めていた。
「生きていた」
「ニンゲンだ」
「殺すか」
「主に相談したほうが」
しばらくモゴモゴ話していたが,結局ばーっと逃げていった。
私が今座り込んでいるのは先程いた草原だったが、何かが違う。
違和感の正体にはわからないまま、またゆっくりと私は草原に横たわる。
「夢じゃ…ないのかな」
まだ頭が追い付かない。
いつの間にかシリスはいないし。
もう一度勢い良く上半身を上げると――
「狐…?」
真っ白の大きな狐がいた。
もふりとしたボディーは多分私の身長を越しているだろう。
「へえ、わたしがみえるのか」
狐がしゃべった。鈴を転がしたような愛らしい少女の声だ。
「ええ、見えるけど。あなたは」
「わたしは白狐の零です。」
「零…さん」
「零で結構です」
ついと首を上にあげ、霊は目を細めた。
「私は朝比奈千夜」
「千夜…ええあなたですか。主がお待ちです。わたしの背中にお乗りくださいな」
そう言って四つん這いになると、ほらほらと急かすようにしっぽを私にぶつける。
乗れ、とは。しかも主って…
「え…主って、誰…?」
「後でわかります!とにかく乗るですっ!」
何故かシャーっと気迫が凄い。結局私は意味の分からないまま半ば自暴自棄に零の背に乗った。
しかし、一つ問題があった。
それは…零の背中は…もっふもっふだった事…至福。
「あの…重くありませんか」
「大丈夫です」
ゆっくり零が立ち上がった。
それだけでぐんと目線が高くなる。
「しっかりつかまっていて」
風の切る音。
思わず目を瞑る…
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