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大きな爆発音。
黄昏を破る一筋の閃光。
誰かに押された感覚、後ろに倒れそうになる。
私の体は鳥居の方へ傾きーー
最後に目に映ったのは、3人の天狗と私を押す零の姿だった……
ぱたぱた、と私の頬に水が当たる。
目を開けると、冷たい水が体を濡らしていた。幾ら夏だと言っても寒くなるだろう。
しかし、どうやら私は鳥居の向こう側に来たらしい。
なぜなら今いるところは草原ではなく川の中だからだ。
横を見る。
しかし、その瞬間私の体は凍りついた。
先程まで私を導いてくれた零の、姿が見えない…!
「れ、零…?なんで、どこに…!」
慌てて立ち上がり、当たりを見渡すがやはり誰もいない。
もしかして…先程の、天狗に襲われて、そのまま…?
けれど、なぜ天狗は私達を襲ってきた?
彼等のあの黄昏と同じ橙の目は、明らかな
殺意に満ちていた。
そういえばアパートで私目掛けお鍋を落としてきたのも天狗だった。
恐ろしい考えが頭をよぎる。
まさか、天狗は…いや、天狗達は…私を殺そうと、していた?
恐ろしいが、確かにそう考えれ辻褄が合う。しかし私には心覚えがない。
もしや、彼等の仲間を祓ってしまったか。
……違う、私は天狗をアパートで初めて見た…でも、今考えてもしょうがないな…
ああ、ふつふつと罪悪の念が湧いてきた…。
とにかく、人を、妖を探そう。今夜泊まれるところを探さなければ。
雨も降ってきた。バックは持っていないのでもちろん傘はない。やばいかもしれない。ただでさえ川に使っていて水浸しなのに、これ以上は…
とりあえず川から上がって、人里を探す。
今はちょうど黄昏が終わった時だ。
まだ私も今の状態が分からない。分からないから、とにかく足を進める。進めて、進めて、遠くを見渡す。
暫くそうしていると、小さな明かりが見えた。
やっと。
私の心にそっと、小さな希望が宿る。
先程とは比べ物にならないほどの速さで、その明かりへと走った。
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