プロローグ

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プロローグ

「お前を求めていた」   一言。 誰かはわからないが、肩に置かれた手は男の手。 こういう時は振り返ってはいけない。 振り返れば————   「ちーやっ!千夜!だいじょーぶ?」 眼の前に手が降られる。 これは…ボーっとしている人に行う行動だ。 「ま、茉那…」 「もう。最近大丈夫?ボーっとしていること、最近多ない?」 「うん、大丈夫。」 今私たちは世界的にも有名なカフェに来ている。 ずずっとカフェオレを飲みながら、先ほどの夢は無視して静かに茉那に問う。 「で、何の話ししてたっけ。」 「もう。今日は千夜の二十三の誕生日でしょう?だからプレゼントまた今度買いに行こうって話」 彼女は実崎茉那。緩い白ブラウスにジーパンといういたってラフな格好、首までのショートカットがトレードマークの良き友人である。 「ああ、もうそんな年になるのか…」 「え、忘れてたん?」 基本私は私のことに無頓着である。 しかし、誕生日という知り合いが私の好みをやたら気に掛ける日は無視はできない。当たり前だが。 「忘れてはいない。けどそれと言って気にしてはない。」 「ふーん…やっぱ、変わってるね千夜は」 「今更」 そうこうしているうちに、時間は過ぎていく。もう六時だ。 「あ、そろそろ時間だから。話の続きまた今度」 「おーけー。せっかくの土曜なのにごめんねー」 「うん。じゃ」 少し高めのヒールを地面に付け、速やかにカフェを出ていく。 向かうところは自分の家。 昨日ささやかだが、近くのケーキ屋さんでタルトを買っておいたのだ。 何分か歩けばすぐ着く。
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