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【 第11話: ほっぺの痛み 】
いつの間にか、外では雨が降っていた。
今の私たちの気持ちと同じだ……。
お兄ちゃんは、下を向いて黙っている。
私は、あの夜、お兄ちゃんが私のほっぺにくれたプレゼントのことを思い出し、右手が自然に右の頬へ行った。
「お兄ちゃん、ヒドイよ……。じゃあ、何であの時、私にキスしたの……?」
「えっ!? キス!?」
「私知ってるのよ! どうしてあの夜、私のほっぺにキスなんかしたの!? お兄ちゃんが本当は私のこと好きなんだって、勘違いしちゃうじゃない!!」
「俺は、お前にキスなんかしたことないよ……」
「えっ!? (どういうこと……?)」
「多分、俺がお前をベッドに連れてった時のことだと思うけど……、お前のほっぺたに、耳かきした時の耳垢が付いてたから、それを取ってやっただけだよ……」
(えっ!? うそっ!? キスじゃなかったの……? 私の勘違い……?)
全ては、私の勘違いだったんだ……。
このほっぺにもらったと思ってたキスも、お兄ちゃんの気持ちも……。
「うわぁーーーーっ!!」
私は両手で顔を塞ぎ、部屋の扉を開けて、外へと飛び出した。
『バタンッ!』
「若菜っ!!」
外はまだ雨が降っていた。
今の私の感情と同じだ……。
とても悲しくて、とても情けない……。
全て私は一人で舞い上がっていただけだった……。
このメイド服も、せっかく新しく買った猫ちゃんグッズも全部びしょ濡れ……。
私と同じ、猫ちゃんも泣いている……。
お兄ちゃん、痛いよ……。
私のほっぺが痛むの……。
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