【 第1話: うちのアパートに変な猫がいます 】

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【 第1話: うちのアパートに変な猫がいます 】

 中学2年の夏休みに、東京の大学に通うお兄ちゃんから、『恋人役』を頼まれた。  それは、お兄ちゃんが言い寄られている女子大生の人を諦めさせようと、妹の私を恋人に仕立てる作戦だったんだけど、うまく行ったかどうかは分からない。  でも、そのおかげで、私はこうして堂々とお兄ちゃんとこのアパートで『同棲ごっこ』みたいなことができるのだ。 「お兄ちゃん♪ かわいい猫ちゃんだぞ♪」 「何だよ、お前。また、その猫コスプレの格好してるのかよ……」  そう、私はお兄ちゃんのアパートに夏休みの1ヶ月、無理矢理転がり込んで、この猫耳と猫しっぽを付けてメイドルックでお兄ちゃんを現在、悩殺中なのだ。 「うちのアパートに変な猫がいるんですけど~」 「変な猫ちゃんじゃないもん! かわいい猫ちゃんだよ♪」  そう言って私は、綿密に計算された猫ちゃんしっぽの綺麗な『Uの字』で、メイドスカートが少し捲れるくらいの角度に調整し、パンツが見えるか見えないかくらいの絶妙な位置にセッティングしてあるこの秘密兵器で、お兄ちゃんをノックアウトするのだ。  そして、極めつけはこのかわいい猫ちゃんのお尻突き出しポーズでイチコロにさせる。 「お兄ちゃん♪ 耳かきコチョコチョしてあげるニャン♪」  私は耳かきを右手に持ちながら、クルリとその場で一回転し、猫ちゃんお尻突き出しポーズで決める。 「耳かきコチョコチョニャンニャン♪」 「ブブッ……」  あっ、お尻突き出し過ぎちゃったみたい……。  お兄ちゃんが鼻血出しちゃったってことは、私のメイドちゃんパンツが見えちゃったのかも……。 「お兄ちゃん、大丈夫? はい、鼻血フキフキしてあげるね」 「いいよ、自分でやるよ……」  私はお兄ちゃんの鼻血をやさしくティッシュで拭いてあげる。  お兄ちゃんは嫌がっている素振りをしているけど、お兄ちゃんをあの綺麗な女子大生に取られないように、いっぱいご奉仕するんだ。  私はお兄ちゃんが好き……。  だから、少しずつでもいい……。  お兄ちゃんとの関係をもっと深めて行きたい。  この1ヶ月の夏の間に……。
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