41人が本棚に入れています
本棚に追加
【 第4話: ほっぺにキス? 】
何だか、夢心地だ……。
気持ち良過ぎて、眠くなってきちゃった……。
「あれっ? 若菜? 寝ちゃったのか? しょうがないなぁ~」
(あれっ? お兄ちゃんが私をお姫様抱っこしてる? どこへ連れて行くの?)
「よっこらしょ。ほんとにしょうがないやつだなぁ~。耳かきの途中で寝ちゃうなんて」
(あっ、ベッドの上に連れてきてくれたんだ。やさしいな、お兄ちゃんは……)
お兄ちゃんは、私をベッドに寝かせると、何だか私をじっと見ているよう……。
(目を開けようかな……)
その時、私のほっぺに、柔らかい何かが……
触れたんだ……。
(えっ!? 今、私のほっぺに何か触れた……。もしかして、これって、お兄ちゃんの……)
(くち……びる……?)
さっき、お兄ちゃんは私のほっぺに『キス』をしてくれたのかも……。
私は、そのことで眠気は吹っ飛んだはずなのに、目を開けられなくなった。
恥ずかしくて……。
お兄ちゃんは、今日も床で寝転んで、お勉強をしている様子。
(お兄ちゃん、さっきのは何だったの……? 若菜にキスをしてくれたの……?)
だとしたら、私のことを好きになってくれたのかも……。
それだったらいいな……。
このことは黙っていてあげるね……。
(大好きだよ……。お兄ちゃん……)
私はそのままベッドの上で、温かい気持ちになっていた。
部屋の中は、お兄ちゃんの本を捲るやさしい音がする。
そして、ベランダに吊るしてある夏祭りで買った青紫色の朝顔の風鈴の音が、私たちふたりだけの静かな夜に鳴り響いていた。
『チリリン……』
最初のコメントを投稿しよう!