【 第5話: キスのお礼 】

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【 第5話: キスのお礼 】

 ――次の日、私はお兄ちゃんのために朝早く起きてパンを焼いていた。  昨日、お兄ちゃんに『キス』のご褒美をもらったお礼をどうしてもしたかったんだ。 「お兄ちゃん♪ かわいい『三毛猫食パン』が焼き上がったニャン♪」 「おお~っ! これはすごいなぁ~! 朝から本格的なパン焼いたのか!」  お兄ちゃんは嬉しそうだ。  昨日、お兄ちゃんに『キス』のプレゼントしてもらったから、私からもかわいい猫ちゃん食パンのお返しだよ。 「ああ~、美味しかったぁ~。若菜、また作ってくれる。これ、美味しいわ」  私はちょっと照れて横を向き、ほっぺを右手で触りながら言う。 「うん、いいよ♪ だって……、お兄ちゃんに、昨日……、素敵なプレゼントをもらっちゃったんだもん……♪」  恥ずかしさに耐え切れず、私は台所へ小走りで向かう。 「えっ? 何か俺、若菜にプレゼントしたっけかな? 耳かきのことか?」  私が洗い物をしていると、お兄ちゃんはいつものように横に並んで手伝ってくれる。  お兄ちゃんが、私の旦那さんになったら、どんなに幸せなんだろうと思う。 「今日さ、大学のサークルで集まりがあって、その後、飲み会だから、夜遅くなるから」 「今日、飲み会なの? また合コン?」 「ああ……、多分違うと思うけど……。また、先輩に誘われて断れなくてさ」 「そうなんだ……。寂しいなぁ~」  お兄ちゃんは、大学のお勉強とか、サークルとか忙しいから、邪魔しちゃいけないと思うけど、何だかちょっと寂しい。  大学というところが、まだどんなところなのかよく分からないけど、色々とお兄ちゃんにもお付き合いがあるんだよね……。  私はそう思いながら、お兄ちゃんを見送った。
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