子犬のモル

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 *** 「リリーは、モルと本当に仲良しなのね」  一カ月後。モルをだっこする私を見て、眼を丸くするお母さんの姿があった。 「お寝坊さんのリリーが、毎朝学校があってもなくても早起きしてリリーの散歩に行くようになるとは思ってなかったわ。やればできるじゃない、リリー」 「モルのためだもん、当たり前よ!モルは私の弟だから、私がしっかり面倒を見るの!」 「立派なお姉ちゃんになって嬉しいわ。モルのことなら何でもわかるのね。まるで、モルとお喋りができているみたいよ」 「うふふ」  父母や姉、友達がいる前では絶対にモルは喋らない。だからモルとお喋りできるのは、みんながいない部屋の中や、あるいはみんなが出かけている時間だけだ。  犬なのに、モルは本当に賢いのである。普通、犬といったらドアを自分で開けられるとか、餌のお皿を自分で片づけられるだけで褒められるものだろう。モルときたら、テレビのチャンネルを自分で操作することもできるし、パソコンを見ることもできるのだ。あのもふもふの手でどうやって操作するのと尋ねたら、何事にもコツがあるんだよとウインクされた。そう、ウインクしようとしてウインクができる犬というのも十分珍しいことだろう。  勉強も教えてくれた。モルは、私よりずっと算数の問題ができるしパズルも得意だ。むしろ私よりできることが多すぎて、少しだけヘコむことも少なくないのだけれど。 「モルの方が、ずっと賢い。私、お姉ちゃんなのにとっても残念だわ……」 「そんなことないよ、気にしないでリリー。君が毎日僕の散歩に行ってくれて、こうして遊び相手になってくれるだけでぼくはとっても嬉しいんだから。それに、いざという時君がぼくを守ってくれるんだろう?」 「それはもちろん。……うーん、ここのピースがどうしても見つからない。コレじゃないのかしら」 「よく見てごらん、色が微妙に違うでしょう?……ほら、そのピースはこっちにハマるんだよ」 「あ、ほんとだ!流石モルね!」  最近のハマりは、両親がやっていた昔のジグソーパズルを二人で組み立てること。レトロな遊びだが、モルと一緒にやるともなれば十分楽しめるものである。  ただ、この頃になると私も少し、モルに対して違和感を感じるようになっていてはいたのである。  モルは、普通の犬よりもずっと人間のに近い餌ばかり好んで食べる。まあ、そういう犬も時にはいることだろう。でも。  とてもたくさんご飯を食べるのに、ちっとも大きくならないのだ。  モルは大型犬、サモエドであるとペットショップで紹介されていて家にやってきたはずである。  それなのに彼はいつまでたっても、小学生の私の両手で抱えられるくらいの小さな白いもふもふの子犬のままであったのだ。
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