閉ざされた秘密 14

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閉ざされた秘密 14

俺の庭は、屋敷の広大な庭の最奥……小高い丘の上にある。  そこへ駆けつける途中、桂人の声が届いた。 「テツさん──テツさんっ」  信じられない事に、桂人が必死に声を張り上げて俺を呼んでいる。  一体何があった?  茂みを掻き分け草むらに飛び込むと、そこには桂人が身を投げ出し、むせび泣いていた。  作務衣の胸元は乱れ、草履は片方しか履いていなかった。  自分の胸に手をあてて天を仰ぎ、涙で頬を濡らしていた。  日が沈み静寂な暗闇に包まれていく中、ただひたすらに俺の名を呼び、雨に濡れた子猫の如く心細げに泣いている。 「一体何があったんだ。どうしたんだ?」  仰向けに眠っている桂人に跨るようにして、しっかり抱きしめてやった。 「あ……本当に……テツさん?」 「あぁ俺だ」 「やっぱり……あなたは……日溜まりの匂いがする」  桂人の躰は、まるで痙攣しているかの如く、ガクガクと震えていた。  こんなに感情を昂らせて。  君が愛おしい……君が抱える闇から救ってやりたいよ。  そんな気持が溢れてきて、自分でも驚いてしまった。 「……こわい……おれはこの躰が……こわい」  カタカタと奥歯を震わせ、桂人は天を仰いだまま俺を見ようとしない。 「おいっ? しっかりしろ! ちゃんと俺を見ろ」 「……駄目だ。おれは……間もなく……うっ……うう……」  そう言いかけて今度は顔を背け、身を屈めて嗚咽する様子に、突き刺さるような悲しみを覚えた。  どうにかしてやりたい!  君の美しく整った横顔……その傍らで黄色い秋桜が秋風に優しく揺れている。やっぱり桂人は秋桜のような人だと、こんな状況なのに見惚れてしまった。 (ケイトを守ってあげて……ケイトを救ってあげて……)  懇願するように……花の声がする。 (ケイトを温めてあげて、震えているの……)    その優しさに誘われるように、俺は自然な動作で、桂人の顎を掴んで唇を重ねていた。何も躊躇うものはなかった。俺がしたいことを、しているだけだから。 「えっ……」    桂人の驚きの声を、まず呑み込んでやる。 「だ……めだ」  抵抗する手も優しく制してやる。ところが…… 「うっ、痛っ……」  激痛が走ったように顔をしかめたので、不思議に思い、横目で桂人の手首を確認すると、どす黒い痣が出来ていた。誰かに強く掴まれて握り潰されそうにになったようで痛々しい。 「……桂人を放って置けない」 「駄目だ……おれに触れるな! 優しくするな! 触れてはいけない」  桂人は口では抵抗するが、俺の唇を受け入れてくれる。  抗えないものを感じているようで、いつもは冷静な顔は、動揺し紅潮していた。 「おれは……穢れてはならないのに……どうして……?」    どの位の時間、そうしていただろう。結界が張られたような俺の庭で、俺はもう一度深く彼を抱きしめた。  桂人の震える唇に、接吻の雨を降らせ続けた。  まるで慈雨のようだ。 「……雨?」   
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