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第三章~6~
里長の元へ辿り着くと、長を含め既に翠から事の顛末を聞いた里の重鎮達が雁首揃えて今後についての会議を行っていた。
來「失礼します」
ノックをし部屋に入ると会議を中断し里長(サトオサ)がこちらへ歩いてきた。
里長「…来たか。状況は芳しくない。一刻も早く姫を取り戻さねばならぬ。」
里長を初め、皆の表情は暗く沈み憔悴しきっていた。それもそうだろう。姫が奪われた事については勿論だが、それ以上に危惧している事があるからだ。姫の中にある封印された忌まわしき力。これが悪しき者の手に落ちる事、これ即ち世界の崩壊を意味するからだ。
里長「まだ若いお主らに頼む事になるのは忍びないが、この里の状態では今動けるのはお主らしかおらぬのだ。」
6人「…」
里長「…やってくれるか?」
6人「御意」
里長「…すまないな…」
そう言うと里長は頭を下げる。それに習うように他の重鎮達も一斉に頭を下げた。
響「里長やめてください!皆様も頭をお上げください!!」
刹「元より姫様の件は我らが役目。命令なくとも動くつもりでおりました。」
煉「そうです!俺たちに任せればお茶の子さいさいですよ…あいたっ」
煉の軽口を拳で黙らす刹那。
だが、その軽口で場の空気が和らいだのは言うまでもない。
頭をあげた里長は他の重鎮達と顔を見合せ頷き、再度言葉を放つ。
里長「月の里里長、月影夜鶴(ヤヅル)が命ず。力が使われる前に必ず姫を奪還せよ。」
6人「はっ!」
里長「ただし!」
命令を受け動き出そうとしたが里長の声に動きを止める。
里長「自分の命を最優先に。誰一人も欠けることなく、皆で無事に戻ってくるのだ。よいな?」
6人「はいっ!」
厳しい声で命令を放つ里長。しかしその表情は、孫を心配する爺の顔だった。
ー続くー
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