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※暫く旦那様ことジュリオ視点です
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僕にはずっと好きな女の子が居る。
公爵令嬢のアレクサンドラ...最初はただのお金持ちのお嬢様だと思ってた。
8歳の頃の事、子供だけに罹患する流行り病のため、貴賤問わずその病に罹ったら国指定のサナトリウムに入れられたのだ。
その時に出会った女の子...それがサンドラだった。
小さくて可憐な女の子で、他の子と違っていつも紫色の高そうな寝間着を着ていた子。
あまりにも可愛らしくて一目で気に入って、泣いていたり寂しそうにしていたら直ぐに駆けつけて慰めてあげる。
きっと紫色が好きなんだろうと庭でひらひらと飛んでいる紫色に光る蝶を捕まえて見せてあげたりした...そうするととても喜んでくれたから。
だからお揃いにと思って標本を作って渡そうと思うもそんな蝶々の事をかわいそう、と言う優しい子でもある。
こんな虫ケラにすら優しいなんてちょっと嫉妬してしまうくらいだ。
流石に標本は渡せないなと考える...せめて紫色の花で押し花を作るかと考えてた頃にとうとうその日がやって来てしまう...サナトリウムから出る日である。
僕はサンドラがここに来る頃には殆ど治っていた為だ...ならもう少し具合が悪いフリをすべきだったと反省する。
サンドラは別れが辛くて不貞腐れて部屋に籠ってしまったようだ...寂しくもあったけどこれ程まで僕と別れたくないという気持ちだったなんてと子供ながらも仄暗い喜びの気持ちすら湧き上がる。
サンドラの部屋でせめて別れの挨拶をと思い向かうとベッドの上で布団に丸まっていた姿がなんとも可愛いらしい...いっそ連れ帰れるならと思う。
布団から顔を出してくれるも、泣き顔だったサンドラ...そのサンドラが僕に大切な大切なサンドラの宝物を色とりどりの花のブローチを渡される...
「忘れないでね」
そう言ってくれた!そう言って抱きついてくれたのだ!
絶対忘れない!絶対にサンドラ...また君に会える様にするから...そしてサンドラ、君と絶対に結ばれるとそう僕は心の中で誓ったんだ。
まさか彼女が公爵家の令嬢だと知らずに...それに気がついたのはサナトリウムを出て直ぐの事だった...
平民の僕には手の届かない存在...でも僕は誰よりもサンドラが好きなんだ!
だから必死に勉強し、魔術の適正があったからそれに磨きをかけていた...そうすれば国の最高機関のどれかに携わり、サンドラに会う事が出来ると思ったからだ。
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