ウツギ

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ウツギ

 ウツギは学校の応接室を出てから、大きな溜息をついた。  先生から呼び出しを受けたのは、今学期になって何回目だろうか。  今日は、授業中に天井からぶら下がって妨害行為を働いたらしい。  次に呼び出しを受けたら、最悪退学かもしれない。  アオズミになんて言おう……。  ところで、当の本人は何をしているのか、姿が見当たらない。 「ツルバミ?」  キョロキョロと辺りを見回す。  念のため天井も見上げるが、いない。  ふと思いついて、廊下の明り取りの窓から顔を出して外を覗くと、やはりそこに居た。窓枠の直ぐ上で壁に足をつけて蹲り、こちらに背を向けている。  ウツギは黙ってその背中に注視した。身体が壁から離れ、空に浮いた。 「うわ! 母さん、話し終わったんだ?」  身体をひねってこちらを見る我が子に、ウツギは再び溜息をついた。 「誰のために呼び出されたと思ってるのよ」 「オレのせい!」  自分を指さして楽しそうに笑う。  重力使いの我が子は、悪びれた様子もない。 「歴史の勉強なんて、ちょーつまんねーんだもん。先生は依怙贔屓(えこひいき)するしさー。『授業態度が気に食わない。目障りだ』って言うから、視界に入んないように天井にいってやったんじゃん?」 「だからと言って、天井で寝っ転がったり好き勝手してたら、クラスメイトの気が散ってしょうがないでしょう?」 「オレにとっちゃ『教室を出ていかない』っていう精一杯の誠意だったんだけどなー」  ツルバミは壁に着地すると、肩をすくめてみせて屋根に向かって駆けだした。  もう、ウツギの力では引き寄せられない。どんどん力が強くなっていっている。色々と、もう限界かもしれない。  まだ、自分にしか力が使えないから良いようなものの、この調子で力をつけていったら一体どうなることやら先が思いやられる。  
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