入隊試験

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「お疲れ様、平助」  沖田に労われると、平助はげんなりした顔になった。  無理もない。ずっと手練れとやるのも疲れるが、全くの素人に付き合うのも体力を使う。しかもたまにちょっと上手い者もいるのだから余計に感覚が乱れるのである。 「もう人ごとみたいに言って。結構大変だったんだからね。総司もやればわかるよ。」 「僕もやりたいって言ったけど、土方さんがダメっていうんだもん。」  ねえ?と沖田が斎藤の方を向いた。 「副長の言ってることは間違ってない。お前が相手をしたら、おそらく今日の半分以上は墓に入る。」  斎藤の言葉に、確かに、と呟く藤堂に向かって沖田はムッとした表情になった。 「お前ら無駄話はそれぐらいにしろ。藤堂今日の奴らはどう思った?」  本題に入った土方に藤堂が答える。 「多分皆さんわかっていると思うけど、僕が近藤さんを見たときの人は剣筋がいいと感じました。だからあの十人は入れていいんじゃないかな。あとはもう実力以外でとりたい人がいればという感じじゃないですか。少なくとも僕はそう思いました。」 「私も平助の見立ては正しいと思いますよ。十人というのは予定より少ないですが、そもそも試験に参加した人数もそんなに多くないのだから無理してとる必要はないかと。」  山南の発言に近藤もほとんど賛成する。 「一回目の時に多く人が入ったからなぁ。このようなものでいいだろう。私としてはあの横川というものは気になったが。」 「あんたはああいう人間好きだよな」  半ば呆れたように土方が言った。 「仕込むのには時間がかかりそうですが、まっすぐなところは評価すべきだとは思いました。」  山南の言葉に近藤は土方の顔色を伺いながら問う。   「私は入れてやりたいのだが、どうだろうか。」  結局近藤の頼みを断れないのが土方だ。 「めんどくさいがまあいいか。実戦に使えるのはまだ先になるだろうが」  これで決まりだと思われた。 「本当に入れちゃうんですか?」
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