将軍の御典医

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「俺はまだ会ったばかりだからあいつのことは何も知らねえ。だけどあの目はちょっと危うく思ったな。」 「危うい…」  土方からすると沖田は基本何にも動じない印象がある。  そんな沖田に甘えて土方は大事な仕事も任せるし、沖田はそれにしっかり応えてくれる。 「だからと言っては何だが、本人の希望通り今はこのことは伏せておいた方がいいかもしれん。」 「それは、これまで通り働かせることになりますが…」 「今すぐどうこういうことはないと思う。何かあったら俺や弟子に言ってくれ。あとは、誰か気にかけてくれる奴がいるといいんだが。」 「考えておきます。」 「そうしてくれ。まあ、ここにはそれ以外にさっきも言った課題が山積みだ。あんたも大変だな、副長。」 「いや、法眼もお忙しい中ありがとうございました。色々勉強になりました。」 「いいってことよ。半分俺の興味だからな。」  そう言って松本は帰って行った。  松本は約束通り、弟子を毎日寄越して病人の世話をさせ、自身もよく顔を出した。  そのおかげもあって新選組の稼働人数は大分改善された。  永倉が作った豚小屋に松本が手配してくれた豚も入った。 「これが豚ですか?かわいいような、そうでもないような…」 「お初ちゃん初めて見たか?とりあえず育てて肥えたら食うらしいぞ!」 「原田はん、召し上がったことありますの?」 「ねえよ。美味いといいな。」 「生きとるの見ると食べづらくなりそうですけど。」 「何言ってんだ?魚と一緒だろ。」 「そんなこと言われても…。せやけどよくお西さんは許してくれはりましたな。獣肉食べるやなんてお寺の中やったら御法度でしょうに。」 「そこは土方さんの腕の見せ所だろ。」  何と言って認めさせたのか、知りたいようで知りたくない。  とりあえず初がやるべきは豚にその日の残飯を食べて太ってもらうことだ。  心の中で西本願寺に謝って、初は仕事に向かった。
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