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「っつうかお前何で一人なんだよ?」
最近は賞金の出所がわかるまで、幹部から平隊士まで一人歩きは禁止されている。
破ったからと言って切腹にはならないが注意は受けるだろう。
「あー、まあ、野暮用です。」
言いつけを破った上、医者に行ったなど土方に報告されては堪らないので何となくぼやかした。
「気持ちはわかる。俺もおまさちゃんに会いづらくなって不便だ。だがな…」
「わかりました。説教は後で土方さんに受けますから、もう帰りますよ。」
「ったく。よし、そいつら連れて帰るぞ。」
結局全員お縄にかけられた男たちを連れ、屯所に向かう。
「しかしわざわざ数人で私なんか狙わなくても。討ち果たせたとして金は分けなきゃならないのに。」
「お前聞いてねえのか?自分の首にいくらかかってるのか。」
「十両くらいじゃないんですか?」
「そんなもんじゃねえよ。平隊士は三両、伍長くらいになると五両、組長格は十両から、俺や平助は十五両、永倉や斎藤は三十両、お前は四十両、土方さんや伊東さんは五十両で、近藤さんは百両だ。」
「近藤先生には百両出るんですか?流石ですね。それに土方さんが伊東さんと一緒ってご本人は怒ってそう。」
「そんなことより、土方さんと伊東さんはあまり屯所を出ないし、近藤さんが出る時はお付きにいっぱいる。そうなると言いつけを守らず一人でほっつき歩いているお前が一番狙いやすいんだよ。」
「そんな風に言われてもなぁ。大体何で私だけ額が高いんです?みんな同じ組長なのに。」
「そりゃお前が獅子奮迅の活躍だからだろう。」
「ああ、斬った分だけ危険人物とみなされるって訳ですね。じゃあ土方さんのせいじゃないですか。」
「それは俺に言うな。」
言いながら原田は沖田に同情した。
自分もたまに浪士に絡まれるが、大体は新選組の一員として狙われるだけであって、原田左之助として狙われることは少ない。
気づけば沖田は一番隊組長として華々しい成果を上げながら、こうして各所に恨まれている。
普通にしていれば、気が利くし、冗談も言って気持ちのいい青年だ。
恨まれるような人間ではない。
「気分転換に何かしたかったら付き合ってやるからよ。もう少し辛抱しろ。」
その言葉に不満気に返事をする様子から、実際どう思っているのか原田は読み取ることはできなかった。
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