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ここ最近の伊東と土方は、互いに警戒心を持っていることを隠そうともせず接していた。
何かあるたびに議論になる。
最終的には伊東が折れざるを得ないか他の幹部に説得されることが多いが、ちょっとやそっとで引く姿勢にはならない。
「伊東さんと土方さん、最近目に見えて仲悪いよな。」
原田がぼやいた。
「伊東さんが結構主張するようになったからな。隊士にもいろいろ尊皇について語ってるし。」
そう言う永倉は以前より熱心に講義への参加を促されるのが面倒に感じていた。
必要と感じたら参加するから放っておいてほしいのだ。
「伊東先生は別に反発したがってる訳ではないよ。山南さんのことがあってから土方さんのやり方に疑問を持ち始めただけで。それに伊東さんはこの国だけじゃなく新選組のことを思って言ってるし。」
何となく居心地が悪いながら藤堂が反論した。
「いや、別に悪いとは言ってない。俺たちだって近藤さん相手に建白書出したりしたこともあるし、土方さんとはよくぶつかる。」
「そもそも土方さんは最初から目の敵にしてたからな。」
その言葉に藤堂はほっとしたような表情になった。
「伊東先生の言うように、もっと浪士の捕縛とかじゃなくて攘夷の役に立つことができればいいのに…」
「それはどうかな?俺たちが来る前は今よりずっと天誅騒ぎも多かったし、京の治安を守るためには多少は致し方ないんじゃね?」
「でもやり方ってもんがあるでしょ?一はどう思う?」
ずっと黙って聞いていた斎藤は突然話を振られて少し顔を顰めた。
「伊東さんの話はそれが叶うに越したことはない。だが実現方法に育ちの良さを感じる。」
「あー!何かわかるぞ、その感じ。」
「育ちの良さ?」
「まあ、平助も育ちがいいからなぁ。」
「何それ、左之さん。褒めてないでしょ?」
「いや、褒める褒めないの問題じゃなくてだな。」
「何が言いたいの?」
「んー、こういう時はなんて言ったらいいんだ、斎藤?」
呆れた表情を原田に向けて斎藤はため息をついた。
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