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墓参りに行ったはずの沖田から、不逞浪士を捕縛したから応援が欲しい、という謎の要請を受けた土方は一行が戻って来た時の様子に驚いた。
「おい、こいつはどうしたんだ?」
「足を捻ってしまったらしくて、多分骨まではいってないと思いますけど。」
それを聞いた途端一気に興味を失ったようで、ぶっきらぼうに指示を出す。
「山崎がいるから手当てしてもらえ。総司は初を置いたら来い。詳しい話を聞く。そいつらは見張りつけて適当に放り込んどけ。後でいろいろ聞かせてもらうからな。」
そのまま自室に戻る土方を沖田がくすくすと笑いながら見送る。
「何が可笑しいん?」
「きっと土方さん、一瞬斬られたんじゃないかと焦ったのが恥ずかしいんだよ。なんだかんだわかりやすいよね。」
「うちの姿に呆れただけやないの?足捻って背負われてるなんて、恥ずかしいから山崎はんとこ連れてって。」
背負われておいて随分な言い方だが、自分に向けられる視線が気になってしょうがない初は沖田を急かした。
「あちゃぁ、すっかり腫れとるがな。骨まではいっとらんけど、あんまり良うないなぁ。大体何でこないな怪我こさえて来たんや?他にも擦り傷まで…」
普段黙々と仕事に励む山崎は、初の前では多弁である。
同じ関西の血が流れる初を、妹のように可愛がっているのだ。
初が事の顛末を説明すると、山崎は途端に呆れ顔になった。
「全く、何やっとんねん。しばらく安静にしとらなあかん。歩けるようになるのも時間かかりそうやし、正座ができるんはさらに後やろな。」
「ええっ!?」
「ええっ!?やあらへんやろ。自分でも結構まずいんはわかっとるんやないか?」
鋭い指摘に言葉が詰まった。
さっきから左足が、何をしなくても痛みを主張してくるのだ。
少し体重をかけるのも今は絶対に無理だろう。
「どないしよう。ただのお荷物になってまう。」
「座ってできる仕事を探すか、勉強するかやな。今のうちに医術も少しかじっといたらどうや?まあ、まずは副長の耳に入れば謹慎や。」
「ほう?やっぱりお前は何かやらかしたんだな?」
障子を開けると同時に現れたのは、噂をすれば鬼副長、土方だった。
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