その時は突然に

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「やっぱりって、沖田はんから話を聞いてはったんやないんですか?」 「その総司の話が要領を得ないから、何かあったんだろうと思ってこっちに来たんだ。で、怪我の具合は?」 「しばらくは歩けへん思いますけど、骨は平気やし、時間さえあれば治ります。」  山崎の説明に土方は頷いた。 「ならいい。で、謹慎になりそうなことなんて、何したんだ?」  初は渋い顔をした。  落ち着いて考えたらとんでもない無謀なことをしていたというのは、先ほど山崎に説明した時に痛感している。  単純に話すのが恥ずかしい。  しかし、黙っていても解放されないのはわかりきっているので一部始終を話した。 「お前は…まあ、気持ちはわかるんだが…馬鹿なのか?」  土方はため息と共に少し困惑したような表情になった。 「そもそも懐刀と言うのはお前が襲われた時の最終手段で使うもので、自ら武器にしたら意味がねえだろ。」 「はい。」 「一方的に家族を殺されて恨んでいるのはわかるが、隊士でなくてもお前は新選組の一員だ。そこはわかってもらわないと困る。」 「申し訳ありません。」 「とは言え土佐の奴らを捕らえられたのはでかいし、総司が目を離した責任もある。怪我をして頭も冷えただろう。どうせ動けないんだから俺から謹慎を言うことはないな。」  一瞬なんだかほっとしたが、初は慌てて大事なことを付け足した。 「あの…沖田はんはほんまに悪くないんです。責任とか、そういうんはちょっと…」 「ならお前は身の程をわきまえて行動しろ。もし助からなかったら総司も夢見が悪いだろうが。」 「それは…反省します。」  土方はそれを鼻で笑って立ち上がった。 「これに懲りて大人しくする事だな。じゃじゃ馬のままでいるよりよっぽど男受けは良くなるぞ。」 「余計なお世話です!」
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