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土方が説明を始める。
「これから剣術の筋を見る。相手はこの副長助勤の藤堂平助。北辰一刀流の本目録をとっている。とりあえず我こそはと思う者は前に出てこい。」
「はい!」
そう大きな声を出して一人出てきた。それを見て皆少々驚いた顔をする。
とても美しい顔をした少年だった。歳は多分十六くらいだろう。私より綺麗かもしれない、と初は思った。
「馬越三郎と申します。お願いいたします。」
彼はそう言って面をつけて竹刀を構えた。藤堂も構えた。
いくらか打ち合って馬越が藤堂から一本が取れることはなかったが、剣の筋はなかなか良かったようだし、幹部たちの顔色を見る限り彼は合格だろう。藤堂がちらっと、近藤の方をみると、土方が打ち合いを止めた。
「次!」
その土方の声に反応したのは初だった。
おそらくさっき馬越の印象が良かったのは彼が一番に出たからだと予想できたし、馬越の後なら自分にはわからない女っぽさが出たとしても、多少ごまかしが効くのではないかとおもったのだ。
「横川初次郎と申します。よろしくお願いします。」
そう言って初は構えると、果敢にも新撰組副長助勤に立ち向かった。
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