入隊試験

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 『横川初次郎』の剣術は馬越と違いはっきり言ってボロボロだ。しかし何度藤堂に打たれても立ち上がって向かっていくので、どんな理由か知らないが絶対に入りたいんだろうと思わせるすさまじい気組だけは感じられた。  また一応竹刀の握り方は間違っていない。ただとにかく非力だった。 「商家のお坊ちゃんかな。あんなに力がないなんて。」  井上が呟いた。しかし左隣の沖田を見ると、二人の打ち合いを食い入るように見ている。 「何か気になることでもあったか。」 「ああ、いえ。ねえ源さん。少し手を見せてもらえませんか?」 「手?別に構わないが。」  自分のを見ればいいじゃないかと不思議に思いながら左手を出すと、 「すみません。見たいの右手なんです。」  仕方なく右手を出すと沖田はそれをちらっと見て、何か納得したような表情になった後、ありがとうございます、と持ち前の笑顔で言って視線を道場の真ん中に戻した。  その後も何人も藤堂に向かっていったが、相当な手練れから竹刀の握り方もままならない素人以下まで様々だった。
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