彼は冷たい

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 彼と同棲を始めて三年が過ぎた。  最初の頃は幸せいっぱいの日々を送っていたというのに、最近は全く口を聞いていない。 「浮気してるよね?」  と偶々それっぽい現場を目撃した事について私が言及してからというもの、彼は口を噤んでしまった。  ……いや、その時彼は色々あれこれ言っていたっけ。  単に仲が良いだけとか。あれは気の迷いだったとか。そもそも俺たち結婚してないじゃんとか。  それで当然喧嘩になって、お互いに口を聞かなくなって……あれからもう……何日目だっけ?  まるで何事もなかったかのように振る舞えば、それで生活は元通りになるのだろうか?  でも、何もかもをなかったことには出来ない。  破局だ。  彼と私の仲は終わった。    私は彼の部屋に行き、床にある彼の体を揺する。  冷たくなっている彼は、何も言わない。  真っ赤になっている後頭部から流れた血は乾き、床は嫌な光沢を放っている。 「せめて謝ってから死んで欲しかったなぁ」  彼は最後まで「俺は悪くない!」としか言わなかった。それが唯一の心残りで、致命傷(彼の愛用の灰皿で後頭部をぶん殴ってやった)を与えてから、命乞いでもするかと思ってここ数日様子見をしていたのだが、結局何も言わずに死んでしまった。  やれやれ。一応彼の勤めていた会社には、彼はインフルエンザになって休んでいると連絡しておいたが、もう時間切れだろう。  私は荷物をまとめた。  そして家を出ようとしてーーピンポーンとチャイムの音が聞こえたので、玄関に行ってみた。  覗き穴の先には、女性が一人。会社の同僚だろうか。  これは私にとっての幸運か。  それとも彼女にとっての不幸か。  私はその女性から何か話しが聞けるのではないかと思い、部屋の中に招き入れた。  もしこの女性が当たりだったら、彼の代わりに謝って貰うとしよう。  
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