ボクの愛しい冷たいキミ

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 ミドルスクールからの帰り、スクールバスを降りればすぐにまとわりついてくる町の人々の視線。パーシィはそれらを丸っと無視して自宅へと向かう。一緒にバスを降りた隣人のケイが、にやけた顔でパーシィを揶揄った。  「おいパーシィ、また隣町のリサがわざわざお前のことを見に来ているぞ。あの熱い視線、羨ましいねぇ。リサは金持ちの娘っていうじゃないか。いっそベスから鞍替えしたらどうなんだ?」  ベスはパーシィのガールフレンドだ。ガールフレンドといっても、触れたこともなければ触れられたこともない。キスも手を繋ぎもしない関係は、ケイに言わせれば不健全であるらしい。ケイが指さす方を見れば、同じミドルスクール生とは思えない扇情的な恰好をしたブラウンヘアの少女が家の角に立っている。まるで穴が空きそうなほど熱烈な視線だ。彼女には見るだけではなく、実際に迫られたこともある。その時パーシィはいつも通り悲鳴を上げて逃げ出した。以降、無理に迫ってくることはなくなったが、ああやって現れるたびに、こちらを誘うように格好が派手になってきている。  まあ、見ている分には眼福だとパーシィも思う。だが触れたいかと聞かれればそれはありえない。  「お前ってさぁ、単純に顔が綺麗ってだけじゃねえんだよなぁ。こう、全身からオーラが滲み出ているっていうか。きらきら光っているっていうか。  見慣れている俺だって、たまにこうやって…」  さりげなくケイが手を伸ばすのを、パーシィは過剰なまでに飛び退(すさ)った。軽く四歩分は離れたパーシィに、ケイは伸ばした手を振って「冗談だって」とへらへら笑う。その目には口惜しさが滲んでいたが、パーシィは見なかったふりをしてさっさと自宅の扉を開けて中に滑り込んだ。
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