ボクの愛しい冷たいキミ

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 最近、ガールフレンドのベスが不機嫌だ。  彼女は未だ、パーシィに触れたことはない。これまでは街中をデートするとき、周りから集まる視線に――それがパーシィに向けられたものだとしても――得意げにパーシィの隣を歩いていた。それで彼女はある程度満足していたのだろう。  だが、未だキスも手を握ることもない関係に、流石のベスも焦れてきたらしい。時折こちらを伺うようにして手を伸ばす。その手からパーシィは即座に逃げる。するとベスも手を引っ込めて謝罪する。そんなやり取りが最近増えてきている。  まだ触れるまではいかなくとも、そのうち本格的に手を伸ばしてくるのではなかろうか。そうなれば、パーシィはベスを好きではなくなってしまうだろう。ベスもそれがわかっているから、パーシィに手を伸ばしあぐねている。  ベスにはパーシィを変える自信があったらしいが、そんな日は永遠に来ないとパーシィは断言できる。ベスもそろそろ、そのことに気付き始めたのではなかろうか。  「ねえ、パーシィ聞いて?  人と人が触れ合うのは、とても素晴らしいことなの。触れ合うことで、人は本当の愛が生まれるのよ。私たちだってそう。パパとママが触れ合った愛の結晶が私たちなのだから」  「そうなのかい、ベス。でも触れられないままでもボクはキミが大好きさ」  「ええ、ありがとうパーシィ。嬉しいわ、とっても嬉しい」  ベスはパーシィから目をそらして、そしてなにかを考えているようだった。  翌日パーシィは、ベスがケイと浮気をしているらしいと別の友人から聞いた。
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