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「なぁ。聞いてる?もっと自分に自信持てって、結構カワイイと思うんだけどな、ユカ」
だから、その優しさはずるい。
身震いして、首を縮めた。
アキオ……
あんたのその無邪気な優しさは、寒いよ。私にとって。
「う、うん。頑張ってみる、わ……」
変にねじれちゃった私の性格も、私らの関係も、ちゃんと責任とってよねって言えたら、どんなによかったのかな。
ちーん。
ち、ち、ち。
メトロノームが鳴り出して、
たんたんたんたん。
たたたたたたたたたたたたた。
今度はパーカッションのリズムが煽る。
いや。
もうこの際言ってしまおうか。
ずっと一緒にいたかったって。
ずっと前からアキオのこといいなって感じてて、
好きかもって気づいて、
でも告って仲いいの壊れたらヤダしって悩んでて、
そんなしてたらトモコと付き合って、
それでもトモコよりもアキオのこと知ってるの私だし、
わかってあげられる自信あるし、
アキオならその鈍感さも許せるし、
なんだかんだ言ってやっぱし、
好きなんだ。
私は。
ああ、どうせだからもう……告ってしまうか……
「あー。ユカりん、やっと見つけたー」
その声に私はビクッとする。スマホから目を離して見ると、トモコが立っていた。
「トモち……あれ、なんで?」
さっきまでの気持ちを誤魔化すように、あわててつくろう言葉を探す。
「今日は……体育館、使う日じゃないの?」
「えー、やだなもう。みんな引退したじゃん。うちらの代は」
「そ、そっか。そうだっけね」
「そうだよ」
最近トモコは言ってることがころころ変わる。無理もないと思う。あんなことがあったあとじゃ。
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