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「ねぇ、いま。アキオと話してたの?」
「え?あ、いやあ。べつに。なんでもない」
隣のアキオは不思議そうに私を見つめてくる。
なんで私を見るのよって言いたくなる。
「ねぇ。一緒に帰ろう?探したんだから」
うなずいて立ち上がると、トモコは私の耳元に顔を近づけ、アキオに聞こえないよう囁く。
「私のウワサ、してたでしょ?」
ポーカーフェイスが、たぶん私は苦手なんだろう。もしかしたら『やましいことなんてなにもありません』って顔に書かいてあるのかもしれない。
トモコはニッコリ微笑んでる。
でも目の奥が笑ってない。
「ね。教えてよ。アキオなんて言ってたか」
天然ぽいところがあって、何考えてるのかよく読み取れない時がある。
ちゃんと上手く伝わるか、心配になりながら、私はトモコの耳元で呟く。
「トモコのことが、わかんないんだって」
トモコの表情が変わるかもって思ったけど、私には変わらないように見える。
「なんでなんだろうね。私も。ずるいよユカりんだけ……」
「ごめん」
トモコは首を振るけど、やっぱり悲しいんだと思う。納得してないみたい。
「ユカ。やっぱオレ、トモコのとこ行ってくるわ」
そう言ってアキオは歩きだす。
ここにトモコいるよって、言うかどうか迷う。
「いろいろ、ありがとな」
その遠ざかっていく後ろ姿を目で追いかけて、またじんわりと涙が滲んでくる。
「やっぱりアキオ。今そばにいたんでしょ?」
そうトモコに言われ、心臓がぐぐぐぐぅっと締めつけられてく。
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