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事故死だった。
交通事故。ブレーキとアクセルの踏み間違えによる自動車が、縁石をのりあげ歩道を歩く通勤、通学中の人達を次々に跳ねた。アキオもその事故に巻き込まれた一人だ。
即死だったらしい。
突然すぎる出来事に、本人が一番驚いただろう。
私は信じられなくって、アキオのスマホにずっと電話してる。あのアキオは同姓同名の別人だよねって、なにかの間違いだよねって、アキオの声が聞きたくて何度もかけた。そしてひどく落ち込んで、散々泣いた。
そんなある日。
泣き腫らしたブサイクな私の前に現れたのが、自分が死んだことを受け入れていない、霊になったアキオだった。
アイツのことが見えるのは私だけで、トモコには見えないし声も聞こえない。
もしかしたら頭がとうとうイッちゃって、私の妄想なのかって思ったけど、それでも私はアキオに会えたことが嬉しかった。
そしてだんだんと辛くなった。
霊になってもアキオはずっと、トモコのことばっかしで冷たいし、当然といえば当然だけど、アキオが頼るのは私だけで、ただの話相手で、ただの幼なじみ。それ以上にはなれないんだと、悲しいけれど、察したし。
悩んで、迷って、このままでいいわけないとさんざん考えて、やっぱり……
もうとっくに死んじゃってるんだよって、
誰もアキオを見えてないよって、
ちゃんと告んないとって思った。
でも私はそんなアイツでも好きだから、どんどん離れたくなくなって、別れるなんて嫌すぎるから、まだ言い出せずにいる。
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