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「爲等~」
高校の門の前で待っていると
俺に気付いた甥っ子が足早に走ってきた。
「どうしたんですか?法嗚お兄ちゃん」
「よっす!」
甥っ子の多副爲等は
髪の毛は真っ黒ストレート
詰襟はキッチリ上までしてて
どっからどう見ても真面目君。
昔っからそうだったけど
“くん”“ちゃん”以外の語句は
全部敬語。
しかも自分より年下の奴に向かってもだ。
まぁ、母さんと妹の芽稚は控えめで
同じような優等生タイプだけど。
ホントあの姉から生まれたとは
とてもとても……
一家最大の謎といっても過言じゃない。
「別に用ってわけじゃないけど、
姉さんは相変わらず?」
「ハイ、この間も財布忘れて買い物行ったって
夕飯の時、大笑いしてました」
……そのエピソード、
もう何万回聞かされたことか。
何故毎回財布が入ってるか確認しないのかと
俺だったら言う所だけど、
満面の笑みで流せるって
「お前凄いな」
「え?どうしてですか?
可愛い自慢のお母さんですよ」
「お前凄いなっ」
慣れなのか感覚鈍麻なのか
単に爲等の器がデカいのか分からない。
“ブーブーブー”
「あ」
「何?ケータイ?
良いよ、取って」
スミマセンと軽く頭を下げて
ケータイの画面を見た爲等の顔は
少し嬉しそうに見えた。
(あ~~コレ、アレだな……)
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