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「僕なんかじゃ無理ですよ。
大体、向こうは法嗚兄ちゃんに
ベタ惚れですから」
そう、それ。
彼女とは小学校の時からの付き合いだけど
その頃からずっと周りに俺のことが好きだの
うちの家業を継いでもらうだの
公言して憚らなくて。
しかも家族ぐるみの付き合いだから
当然そのこと互いの両親も知ってて
俺が一回でもウンと頷けば
速攻結婚するハメになるだろう。
だから今でもたまに此処のおじさんとかと
飲む時には絶対酔わないように気を付けてるんだって話。
「向こうは待ってると思いますよ」
いや、待ってないね。
なんなら今もガンガン来てるから!
(はぁぁぁ~~~~)
いい子……か。
分かってるさ、
そんなの言われなくても。
大らかで面倒見が良くて社交的。
姉御肌で優しい。
誰から見ても良い人でその上裏表もない。
どこか姉さんと似ていて
妹よりも実の姉妹に思えるほどだ。
でもな、
性格的に良い人だから好きになるわけじゃねぇ。
そんな単純なもんじゃねぇんだよ、恋愛って。
結局はタイプじゃないだけなんだけど。
こればっかりはしょうがないだろ。
いや、全然贅沢を言ってるわけじゃない。
フツーに美人で可愛くて優しくて
フツーに頭が良くておしとやかで
フツーに黙って俺の話を聞いてくれて笑顔が絶えない、
そんなフツーの人で良いんだ、俺は。
しかし、現実は
不思議なことに俺の理想と
世間の基準とのソリが合わなくて
いまだ童貞を続けている訳だが……
全く世の中どうなってんだ!?
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