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「諦めろ」
「ハァ?」
「アイツには好きな奴がいる」
「ソレ、あの女のこと言ってる?」
「うん」
「俺が芸能界に入った途端、爲等をダシに近づいてきて
仮にも彼氏がトイレに行った隙に言い寄って来るような
あの女のこと!?」
汚いものを思い出すかのように
吐き捨てたセリフには侮蔑の意が込められていた。
「そそ」
「テメェ……」
俺の言い方が余程ムカついたのだろう
侑夜は俺の胸ぐらを掴んで
怒りで拳をブルブルと震わせている。
「それでも爲等の初恋の相手だ」
それでも敢えて言ったのは、
「バカだろ、アイツ。
誰が見たって
他に男いるの分かんのに!」
「……見えないんだよ、純粋だから。
振り回されていること自体気付いてない。
自己中心的な彼女の言動は
自分に対する可愛い甘えだと……」
お前自身も冷静に現実を見るべきだと思ったからだ。
「うるせぇ!!
黙れ!!!!!」
が、当然侑夜はブチ切れた。
「よくも淡々と言えるな?
自分の甥っ子だろ?可愛くねぇのかよ!」
「可愛いに決まってんだろ」
「だったら!!」
「言っても無駄だからだ」
今度は俺が煙草に火をつけようとすると
その箱ごと叩き落された。
「痛てーな、落ち着けよ。
お前よくそんな態度でアイドルやれてるな。
マネージャさぞや大変だろうぜ」
ハーハーと肩で息つくアイドル様を見上げて
俺はヤレヤレと息をついた。
「侑夜、お前がここでギャーギャー騒いでも
俺が史珂の本性を爲等に諭しても届かねぇんだよ。
結局、アイツ自身が現実を目の当たりにして
受け入れない限り」
「傷つくの見てろっていうのか」
「あ、その時を乗じて……って手も?」
「馬鹿にすんな!
もういい!!
アンタに相談したのが間違ってた。
クズ警官野郎!」
侑夜は来た時以上の足音を立てながら階段を下りて行った。
「ふ……若いねぇ……」
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