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翌日、拓と悠哉はいつもの山の入り口の前で落ち合い、山の中へと向かっていった。
「悠哉、よくいつも迷わずに歩けるね。」
「まぁね。もう何年も歩いてるから。そうだ、今日はこっちの道から行ってみようよ。」
その道は太陽に照らされて眩しく、足元には一面、シロツメクサが咲いていた。
「ここは木が少ないから暑いんだ。でも花が咲いててさ、拓にも一度見せたかったんだ。」
拓は、悠哉が見せてくれたシロツメクサの咲くこの道を、今日の絵日記に描こうと決めた。
二人は花を踏みつけないように注意深く歩き続けた。
ふと、拓は思い出して言った。
「そういえばさ、友達ができたって言ったらおばあちゃん喜んでて、今度うちに遊びにおいでだって。スイカ切ってくれるって言ってた。」
「スイカいいなぁ。嬉しいんだけど、人の家には行けないんだよ。」
「そうなの? 悠哉の家、厳しいんだね。うちのおばあちゃんもおじいちゃんも優しいし、怒ったりしないよ?」
「うん。知ってるよ。」
拓は不思議そうに悠哉を見たが、悠哉は嬉しそうな、困ったような、寂しそうな表情をするだけだった。
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