夏の友達

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 翌朝は晴天で、太陽は相変わらずギラギラと照っていた。 「昨日はすごい雨だったからね、今日は残念だけど山へは行けいないよ。水が増えてるし、滑って危ないから。」  恵子がそう言うと、拓は「うん」とだけ返した。 「そうだ、拓ちゃん。おばあちゃん街まで行くけど、拓ちゃんも一緒に行かない?」  恵子は、拓が遊びに行けなくて塞ぎこんでいると思い、気分転換になればと誘った。 「うん。行く。」  拓はそう言うと、支度を始めた。  恵子は日傘をさし、拓は麦わら帽子をかぶって出かけた。  両側に田園が広がる道を、二人は「暑いね」と言いながら歩いた。  しばらく歩くと、道の向こうから人々が連なって歩いて来るのが見えた。  拓がその列を見つめていると、「法事だね」と恵子が言い、 「亡くなった人のために、何年かごとに皆でお祈りをするんだよ。」  と教えてくれた。  列が近づいてくる。  拓はすれ違いざまに、無意識に遺影に写る人物の顔を見た。  その瞬間、拓は「あっ」と声を漏らした。  恵子もその声につられて遺影を見た。  それから、優しく微笑んで言った。 「この前言ってた、拓ちゃんの友達かい?」 「…うん。」  拓は驚きのあまり、それ以上何も言葉が出てこなかった。  暑く熱せられたアスファルトの道を、二人はしばらく黙って歩いた。  拓が、ぽつりと言った。 「おばあちゃん、驚かないの…?」 「昨日思い出したんだよ。何年か前、ちょうど今の拓ちゃんと同じ小学五年生の子がこの地域で亡くなってね。その子の名前が確か悠哉くんだったって。だから、もしかしたら拓ちゃんの言ってたお友達って、その悠哉くんなんじゃないかってね。悠哉くんは、山で会うといつもおじいちゃんとおばあちゃんを手伝ってくれたんだよ。」  恵子はそのときのことを思い出すように、空を仰ぎ見て言った。  拓は、悠哉が明と恵子を手伝っている姿を想像した。 「そっか。だから悠哉はおばあちゃんとおじいちゃんのこと、知ってたんだ。」  不思議と怖さは感じなかった。 「そうだ。明日、大きいスイカを一緒に持って行って、悠哉くんのお墓にお供えしようか。」 「そうしたい! 悠哉、スイカいいな、って言ってたし!」  拓はまた悠哉に会えるとわかって嬉しくなった。  それと同時に、もう会えないのだとわかって、悲しくなった。  明日お墓参りに行ったとき、この前できなかった来年の夏休みの約束をしよう、と拓は思った。
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