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とぼとぼと歩いているといつの間にか家に着いており、拓は玄関の扉を開けた。
「ただいまー。」
ふと、綺麗に掃除された玄関に父親の直樹の革靴が置いてあるのが目に留まった。
拓は、お父さんは夜にならないと帰ってこないはずなのにと不思議に思いながらもリビングに向かった。
リビングでは直樹が疲れた表情で麦茶を飲んでいた。
「お帰り、拓。」
「ただいま。お父さん、どうしたの…?」
拓は不思議そうに尋ねた。
直樹は優しく「おいで」と言って拓を自分の近くに呼んだ。
拓の両手を優しく握りながら、
「実は朝拓が学校に行った後に、お母さんが倒れたんだ。」
「えっ……。」
思いがけない直樹のセリフに、拓は一瞬固まる。
「お母さん、大丈夫なの…?」
「意識はあるし、話もできるよ。これから、何か体に悪いところがないかどうか検査するんだ。しばらく病院に入院することになる。」
拓を安心させるように、直樹は握った手を何度か軽く上下に振った。
「拓も一度病院に行って、お母さんをお見舞いしような。」
拓は、頭を上下に大きく振った。
急いでランドセルを部屋に置き、車で待つ直樹のもとに向かった。
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