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「子供の神様……いや、神様の子供か? 家は神社か何かなのか?」
「いんや、両親ともに運び屋だぜ!」
御子神は顔の横で右手の親指をビシッと立てる。
いちいち動作が大げさな男だ。
「運び屋?」
俺が首を傾げると、彼はニッと唇を釣り上げた。
「別名、セールスドライバーともいう」
「ああ……」
「あれ? 面白くなかった? 久豆葉ちゃんはめっちゃ笑ったのに」
「お前、あきらの友達なのか?」
「そう、めっちゃくちゃ友達だぜ!」
「めっちゃくちゃ友達か」
その言い方にくすっと笑ってしまう。
あきらは天然の人たらしだ。御子神もタラされた人間のひとりということらしい。
「うーむ、意外や意外」
御子神がまじまじと俺の顔を見てくる。
「え、何が?」
「久豆葉ちゃんったら何度遊びに誘っても、友哉と先約があるからーって毎度毎度断るからさ。倉橋友哉って男は、すげぇ独占欲の塊みたいなやつなのかと思っていたのに」
「俺が……?」
独占欲であきらと一緒にいるわけではないのだが、『あれ』のことを知らない相手にはそう見えるのか。
「でも、話してみると意外にまともだ。ちょっと拍子抜け」
「はぁ、それはどうも」
「うん、やっぱ来てみて良かった。久豆葉ちゃんのことで話があるんだけど、どっかで……」
その時、予鈴が鳴り響いた。
「あーっと、とりあえず次の10分休みにまた来る」
「じゃぁ、非常階段でどうだ?」
「OK! あ、それと俺のことはレンでもミコッチでも好きに呼んでくれ」
「ミコッチ……?」
聞き覚えのある愛称だ。そういえば、あきらの話の中で何度もその名前を聞いたことがある。
「ああ! あんた、武勇伝いっぱいのミコッチか!」
「はー? なんだよそれぇ」
「あきらから色々聞いているよ」
「色々って何だよ」
「そりゃもうイロイロだ」
相手が噂のミコッチだと分かって、俺の中の警戒心は一瞬で消え失せた。あきらの話すミコッチという人物には、裏表がぜんぜん無くて好感を持っていたのだ。
「うわー、イロイロが気になるけどもう行かねぇと!」
御子神はくしゃっとした笑顔を見せると、軽く手を上げて、来た時と同じように走って教室を出て行った。
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