2-(1) ざわめき

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「子供の神様……いや、神様の子供か? 家は神社か何かなのか?」 「いんや、両親ともに運び屋だぜ!」  御子神は顔の横で右手の親指をビシッと立てる。  いちいち動作が大げさな男だ。 「運び屋?」  俺が首を傾げると、彼はニッと唇を釣り上げた。 「別名、セールスドライバーともいう」 「ああ……」 「あれ? 面白くなかった? 久豆葉ちゃんはめっちゃ笑ったのに」 「お前、あきらの友達なのか?」 「そう、めっちゃくちゃ友達だぜ!」 「めっちゃくちゃ友達か」  その言い方にくすっと笑ってしまう。  あきらは天然の人たらしだ。御子神もタラされた人間のひとりということらしい。 「うーむ、意外や意外」  御子神がまじまじと俺の顔を見てくる。 「え、何が?」 「久豆葉ちゃんったら何度遊びに誘っても、友哉と先約があるからーって毎度毎度断るからさ。倉橋友哉って男は、すげぇ独占欲の塊みたいなやつなのかと思っていたのに」 「俺が……?」  独占欲であきらと一緒にいるわけではないのだが、『あれ』のことを知らない相手にはそう見えるのか。 「でも、話してみると意外にまともだ。ちょっと拍子抜け」 「はぁ、それはどうも」 「うん、やっぱ来てみて良かった。久豆葉ちゃんのことで話があるんだけど、どっかで……」  その時、予鈴が鳴り響いた。 「あーっと、とりあえず次の10分休みにまた来る」 「じゃぁ、非常階段でどうだ?」 「OK! あ、それと俺のことはレンでもミコッチでも好きに呼んでくれ」 「ミコッチ……?」  聞き覚えのある愛称だ。そういえば、あきらの話の中で何度もその名前を聞いたことがある。 「ああ! あんた、武勇伝いっぱいのミコッチか!」 「はー? なんだよそれぇ」 「あきらから色々聞いているよ」 「色々って何だよ」 「そりゃもうイロイロだ」  相手が噂のミコッチだと分かって、俺の中の警戒心は一瞬で消え失せた。あきらの話すミコッチという人物には、裏表がぜんぜん無くて好感を持っていたのだ。 「うわー、イロイロが気になるけどもう行かねぇと!」  御子神はくしゃっとした笑顔を見せると、軽く手を上げて、来た時と同じように走って教室を出て行った。
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