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信奉や狂信……。
オカルト研究部の部室の外でずっと待ち続けていたファンも、そんな感じだった。
俺はごくりとつばを飲み込んだ。
「あきらはモデルでもアイドルでもないのに、みんな熱狂しすぎだろ……」
「熱狂して騒いでいるならまだいいっしょ! あいつら教科書を広げていても、何人かで話をしていても、目だけはじーっと久豆葉ちゃんを追いかけているんだからさ。それってもう普通じゃないだろ。とにかく……」
御子神が何か言いかけた時、予鈴が鳴った。
俺の腕をぐいっとつかんで、御子神が顔を寄せてくる。
「とにかく、久豆葉ちゃんのまわりで何かが起こっている。倉橋もそういう何かを感じたからオカルト部に入ったんだろ」
「あ、まぁ……」
オカルト研究部に入ったのは、単なる偶然だったのだが。
「俺には特別な能力は何も無いけど、クラスの連中とは違ってその何かの影響を受けていないみたいだ。だから、もしかしたら久豆葉ちゃんの力になれることがあるかも知れないと思って」
「どうしてあきらに直接言わないんだ?」
「言ったよ! クラスのみんなが異常なくらいお前を見ているって。でも、久豆葉ちゃんはぜんぜん深刻には思っていないみたいで」
「ああ、今までさんざん騒がれ過ぎて麻痺しているのかもな」
「でも、このまま放置しておくのは良くない気がするんだよ」
「確かに……」
御子神は柵から手を離して姿勢を正すと、真剣な目で俺を見てきた。
「俺は久豆葉ちゃんが心配なんだ。倉橋もそうだろ?」
俺はうなずき、御子神を見て微笑んだ。
「……ミコッチは、いいやつだな」
実感を込めて言う。
「はっ、よせやい。おだてても何も出ないぜ!」
御子神はおどけたように言って笑い声をあげた。
その声があまりにカラッとしていて、俺もつられて笑ってしまった。
「なぁ御子神、明日の土曜日なんだけど」
「あれ、もうミコッチって呼んでくれないの?」
「御子神。明日予定がないなら俺達と一緒に一乃峰に登らないか」
「明日? 別にいいけど」
「俺とあきらと吉野部長で『道切り』っていうものを調べるつもりなんだ。まぁ素人のやることだから空振りの可能性もあるけど、もしかしたら今起こっている異変の手掛かりが何かつかめるかもしれない。ひとりでも味方がいれば心強い」
「りょーかい!」
俺と御子神はリンリンの友達登録をした。俺のリンリンの登録者があきらと吉野に次いで三人目だと知って、御子神は微妙な顔をしていたが、スマートフォンの時間表示を見て急に慌て出した。
「やっべ、遅刻になる。すぐ戻ろう」
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