2-(3) 選択肢

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「うん。その瞬間、何かが飛び出してきて俺は襲われた。いつもの『あれ』より強くて凶暴なやつで俺はもう死ぬかと思ったのに、その時、友哉が助けに来てくれた」  俺は黒い方の箱をぱかりと開けてみた。あきらがぎくりと身構えたが、今は何も入っていないし、何も飛び出しては来ない。 「あの時の『あれ』は今までで一番強かったよな」  息づかいや臭いまでして、生々しい存在感もあった。俺もあきらも体中を噛まれて、俺は右耳が少し欠けてしまった。 「早苗さんは俺に死んでほしかったんだよね。だから迷わず黒い箱を開けたんだ」 「違う」 「何が違うの」 「俺に助けてって電話してきたのは、早苗さんだ」 「え……?」 「あきらを助けて、お願いって」 「自分で箱を開けておいて……?」  俺はこくりとうなずいた。 「きっと、怖くなっちゃったんだと思う。土壇場になって、やっぱりあきらを死なせたくないって、そう思ったんだろ」 「そうなのかな……」  あきらはベッドから降りてこちらへ近付き、恐る恐る箱に手を伸ばした。 「わっ」  電気でも走ったかのように、手を引っ込める。 「なんか、痛い。触れない」 「そうなのか? じゃぁ、こっちの箱は?」 「えっと……(いた)っ! こっちも触れないや」  あきらは箱に触れない。  それはどういう意味を持つんだろう。 「こっちの箱、お札が破れているってことは友哉が開けたの?」 「いや、俺じゃない」  俺は、あの時あきらの叔母と交わしたやり取りを、思い出せる限りあきらに伝えた。  あきらがぱちくりと瞬きする。 「重くなった? 俺が?」 「ああ」 「それってどういう現象?」 「よく分からない」 「分からないことだらけだね」 「そうだよな」 「で、そっちの箱には俺の(へそ)の緒とかが入ってるんだ?」 「そうだ」  俺は札のついている方の箱を開けて見せた。中には白いさらしのような包みが入っているので、俺はそれを取り出してあきらへ差し出した。  あきらは恐々(こわごわ)それをつつく。今度は痛みもなく触れたようで、ほっとした顔で受け取ると包みを開いた。  5センチくらいの干からびた臍の緒と、こよりで束ねられた十数本の短い髪の毛、それと3センチ四方の和紙の包み。和紙を開くと、薄い桜色の小さな爪が入っていた。 「うわ、ちっちゃ!」
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