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カタカタカタカタ……。
頭の中にオセロの盤面が思い浮かんだ。
ほとんど白で埋まっている盤面がたった一手ですべて黒に変えられていく。カタカタカタカタと、ひとつひとつの出来事の意味が、頭の中ですべてひっくり返されていく。
白い駒が、黒い駒へ。
表側が、裏側へ。
今まで呪いだと思っていた『あれ』が、まったく逆のものへと。
全部が、すべてが、さかさまに。
「友哉?」
動きを止めた俺を、あきらが不思議そうに見つめてくる。
「な、何でもない。こんなもん、すぐ捨てよう」
頭に浮かんだ考えを振り払うように、俺はそのお札をビリっと勢いよくふたつに裂いた。そのふたつを重ねて、またビリビリと破いていく。厚手の和紙で出来た札はすごく破りにくいけれど、俺は指に力を込めて何度も何度も粉々になるまで破り続けた。
「大丈夫。嫌なものは全部外のゴミ箱に捨ててくるから」
「う、うん」
細かくなったお札を木箱と一緒にビニール袋に詰め、一階の勝手口の外にある大型のゴミ箱へ捨てに行く。
暗い階段を降りたところで、あきらのいる二階を見上げた。俺の部屋の開けっ放しのドアから、温かい光が漏れている。
あきらのいるところは、いつも明るくて温かい。俺にとってあきらは光そのものだ。だから、こんなことを考えるなんて馬鹿げているのに。
俺はお札と木箱が入ったビニール袋を、ぎゅうっと強く握りしめた。
…………もしかしたら、あきらは人間じゃないかもしれない…………。
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