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ゴミを捨て、ゆっくりと階段を上がり、部屋に戻る。
どういう顔をしていいのか分からずに、無理に笑顔を作ってから部屋に入ると、あきらがかがみ込んでベッドの下を覗き込んでいた。
「何してるんだ、あきら」
「うーん、エッチな本とかDVDとか隠してないのかなーって」
「は? そんなもの隠して無いよ」
ちょっと緊張していた自分との、あまりの落差に力が抜ける。
「そう? じゃぁクローゼットの中? もしかしてスマホに動画ためてる?」
「だからそんな大人が見るようなもの、俺は見たことないって。つうか、あきらもだろ? そもそもR18のものなんて高校生には買えないだろ」
「え……」
あきらが信じられないものでも見るような顔をして、俺を見上げた。
「何だよ、その顔」
「友哉って……大人ぶっているけど、実は中身が小学生だよね」
「はぁ? 中身小学生はあきらだろ。そんなこと言うってことは、お前はそういうヤラシイものを持っているってことなのか?」
「さぁ、どうでしょう」
「くそ、その言い方なんかムカつく。持っているんなら見せてみろよ」
「えー、やだよ。友哉にはいつまでも清らかでいて欲しいもん」
「清らかって何だ。バカにするな」
「バカになんてしてないよ。いいから、もう寝ようよ。明日、一乃峰にハイキング行くんでしょ」
「それは、そうだけど」
明らかに話題をそらされたのが分かって、なんだか釈然としない。
普通の高校生はそういうものを持っているものなのか?
俺は自分の世界がかなり狭いことを自覚している。ほとんど毎日学校と家との往復だけで、あきら以外に友達はいない。でも、あきらは学校に御子神を含めてたくさんの友達がいるみたいだし、俺の知らないことを色々と知っているということだろうか。
「ごめんごめん、嘘だから。俺もエッチなものなんて持ってないよ」
あきらがニコッと笑った。
「そうか……?」
「うん、ちょっとからかってみただけ。それより明日楽しみだなー、ハイキング」
「遊びに行くわけじゃないんだぞ」
「分かってるよ。その道切りっていうのを取り除いてみて、俺達がそこを通れるようになるのか実験するんだろ」
『あれ』の境界線と道切りの蛇の位置は、ぴったりと重なっている。それだけで、その道切りが『あれ』と関係があるという確証にはならないけど、偶然にしては出来過ぎている。
「通れるようになったらすごいよなー! まずはどこに行く? やっぱ東京? それともテーマパーク? いやもう二人で行けるならどこでもいいよな。一歩でも外に出られたら、俺、泣いちゃうかも」
「あきら、気が早いよ。まだ出られるかも分からないし、出られたら出られたで新しい問題が浮上するだろ」
「新しい問題?」
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