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相手はどうして俺達を、あきらを閉じ込めて攻撃してくるんだろう?
たとえあきらが人間じゃないとしても、目も口も鼻もあって話も出来て、泣いたり笑ったりする優しい心もちゃんとあるのに。
「ねぇ、友哉。俺は体も大きくなったし、力も強くなったし、これからは俺が友哉を守りたい。俺にどーんとまかせてくれていいよ」
あきらは大げさに自分の胸を叩いて見せた。
「いや、そんな、まかせられないって。なんか心配すぎる」
「えええー」
あきらが子供みたいに口を尖らせる。
「俺、今、ちょっと良いこと言わなかった? ここは感動するところじゃない?」
めちゃくちゃ心配している俺の気も知らないで、あきらはまた能天気なことを言っている。
「はいはい、分かった、チョー感動した」
「うわなんか、おざなり」
「そんなことないって、これからはあきらを頼りにするよ」
「ほんとだよ。友哉が俺を守るんじゃなくて、俺が友哉を守るから」
「はいはい。ああほら、青春ドラマっぽいセリフはもういいから。遅いからもう寝よう。寝不足で山道はきついだろ、つか俺がきつい」
「うー、分かった。じゃ、おやすみ」
「おやすみ。寝坊すんなよ」
「寝てたら起こして、お兄ちゃん」
「こんなときばっかりお兄ちゃんって言うな」
「はぁーーーい」
「はい伸ばし過ぎ」
「はいはい」
「はいは一回」
「さっき、友哉もはいはいって言ったー」
「え、言ったか?」
「言ったよー。でも分かった。はい、おやすみー」
あきらは笑いながら部屋を出て行った。
急に部屋の中が静まり返って、俺はくたっとベッドに倒れ込んだ。
感情の起伏が大きい一日だったから何だかひどく疲れていて、お札三つ分の空白が出来た壁をぼんやりと見上げる。そのままベッドの上でぼうっとしていると、さっきのあきらの子供っぽいしゃべり方が思い出されてきて、知らずクスクスと口から笑いが漏れていた。
あきらは、やっぱりあきらだ。
悩むのもバカらしい。
たとえあきらが何者だとしても、結局何も変わりはしないんだ。
俺にとってあきらは親友で戦友で兄弟で、バカ話が好きでゲームが好きでいつも笑っていて、ちっとも怖くなんかない。
この先もずっと、俺はあきらのそばにいるだろう。
俺の心の中には最初から、あきらから離れるという選択肢は存在しないのだから。
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