31人が本棚に入れています
本棚に追加
「いえ、調べるなんて大げさなことはしていません。リンリンでのオトモダチなどに二人を知っているかと聞いてみただけです。知り合いの知り合いの知り合いを辿っていくと、普段話したことのない人ともたくさん交流できますので」
「リンリンでそんなことが」
「はい。君達は有名人なので、びっくりするぐらい多くの反応がありましたよ。僕の友人の何人かはいつのまにか久豆葉君のファンクラブに入っていましたしね」
「うげ」
ファンクラブと聞いて、あきらが嫌そうな顔をする。
「ま、たった三人しかオトモダチがいない倉橋には分かんないよな」
御子神がおかしそうに笑う。
「えー待って、俺なんか二人だよー。ミコッチ、友達登録してー」
「まじかよ。分かった、ほらスマホ出して」
御子神があきらのスマートフォンを操作して友達登録するのを待ち、吉野が言った。
「では御子神君、この道切りを取りはずすのを頼んでもいいですか」
「え、俺ですか?」
「信じていない人の方が抵抗なく出来るんじゃないかと」
「吉野さんは抵抗があるんですか」
「ええ、実は少し怖いんです」
自分が怖いことを人にやらせようとするのかと思ったが、俺達も自分で出来ないことを人にやってもらおうとしているのだから、同じことかもしれない。
「ミコッチ、頼める?」
壁のこちら側からあきらが不安そうに言うと、御子神は苦笑いをした。
「しゃーない、分かったよ」
「記録として撮影させてくださいね」
スマートフォンを構える厚かましい吉野に対して、御子神は苦笑いのままうなずき、
「ネットとかにあげないでくださいよ」
と言いながら、肩をぐるぐる回して道切りに近づいた。
「じゃぁ、取るぞ」
「頼む」
「お願い」
「よろしくお願いします」
蛇の道切りは手の届く位置にある。これを設置した者は、まったくの部外者にいたずらされたり取られたりすることは考えなかったんだろうか。それとも定期的にメンテナンスするために、わざと手の届く位置に付けたんだろうか。
御子神は躊躇することなく道切りに触り、幹にくくりつけている細い紐をほどいていく。そして簡単に、それはぱらりと幹からはずされた。
特に何も起こらないようだが……。
「あっ」
「ふあっ!」
「なんだ、変な声出して」
御子神がびくりと振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!