3-(1) 友哉が隣にいないと

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 子供の頃からずっと、俺のまわりはおかしかった。俺は蛾を吸い寄せる炎のように周囲を誘ってしまって、男でも女でも年上でも年下でも周りの人間はいつも俺に強い関心を持って近づいて来た。親代わりの早苗でさえ、かなり早い段階で俺を子供ではなく『男』として見るようになっていた。  それでも、まだ俺はぎりぎり人間の範疇に留まっていたのに……。  自分の力が半分以上封じられていたことを、早苗の失踪の日、臍の緒の封印が解かれてから俺は知った。それまで見えなかったものが急に目に映るようになり、それまで以上に急激に周囲がおかしくなっていったから。  クラスの連中も、ファンクラブとかいう奴らも、どんどんエスカレートして俺に夢中になっていった。  俺にとっては、友哉だけが救いだった。  友哉は俺に支配されなかった。  支配されていないのに、いつでも俺を想ってくれた。  親友として、戦友として、兄弟として、誰より大事にしてくれる。  友哉だけはずっと、何も変わらないでいてくれたんだ。  だから、友哉がそばにいる間だけは、俺は普通の子供でいることが出来た。  子供が子供でいられる時間がどれだけ幸せなものか、当たり前のようにその中にいるやつらはきっと考えもしないんだ。  もしも友哉を失ったら、もう人間のふりをする必要もなくなってしまう。  もしも友哉を失ったら、獣の本性を抑える意味も無くなってしまう。  もしも友哉を失ったら、俺は何人殺せばいいんだろう。  くだらない結界をはったやつらも、そいつらに協力していたであろう早苗も、俺をこんな風に生んだ母親も……。  きっと何人殺したって気が済むことは無くて、俺自身が退治されるまでずっと殺し続けるしかなくなるんだ。 「友哉……ともや……ともやぁ……」
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