3-(1) 友哉が隣にいないと

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 両手でごしごしと涙を拭う。  息を大きく吸って、吐く。  今まで友哉に知られたくなくて、必死に力を抑えて来た。  けれど、今は逆だ。  どこまで人間を思い通りに操れるのか、やれるところまでやってみようと思う。  俺は後ろを振り向き、遠巻きに囲んでいる女どもをざっと数えてみた。7、8人どころか20人くらいにまで増えている。  俺は彼女達に向けて、ニコッと笑顔を作った。  表情の無かった20人が、とたんにワッと騒ぎ始める。 「あきらくーん」 「あきらくーん、こっち見て―」 「こんなところで会えるなんてすごーい」 「私達、運命みたーい!」 「あきらくーん」 「あきらくーん」  うるさいだけで煩わしい女どもの反応が、今だけは心地よく感じる。  俺は両手を大きく振って、にこやかに呼びかけた。 「みんな、こっちにおいでー」  俺の呼びかけにみんな一斉に走り出した。  うっとりとした顔をして俺を見つめてくる。  うん、きっと何でもやってくれそうだ。 「ああ、みんないい子だね。じゃぁこれから俺の言う通りにしてくれる?」
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