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俺は笑って雪華を観察した。
頭に包帯を巻いていて、歩く時には右足を引きずる。タートルネックの首元や袖口からも包帯がちらりと見えているから、体中に怪我をしているのかもしれない。
「私が一族の中で最も蘇生の術に精通している。お前は倉橋友哉を助けたいのだろう?」
俺はベッドに眠る友哉を見た。点滴の管もモニターにつながるコードも、あの混乱の中ではずれてしまった。医者に命じて新しいものを用意させようとしたけど、雪華はそんなものはいらないと言った。
「じゃぁ、生贄の価値を俺に示してよ。きちんと治せなかったら雪華は死ぬけどね」
「もとよりその覚悟だ」
俺は友哉の手を撫でてから、そっとベッドから離れた。
雪華が足を引きずりながら、ゆっくりと友哉に近づく。
「蘇生ってことは、友哉は仮死状態みたいなものなの?」
「完全に死んではいないが、魂が抜けかかっている」
「熱が出ているのは?」
「体が生きようとして抗っている。だがそのせいで消耗が激しい。放って置けば今夜の内に死んでいただろう」
雪華の骨ばった指が友哉の頬から首へ、ついと滑った。
ぞわりと嫌な感じがして、つい睨みつける。
「そんな顔をしないでくれ。触らないと治せない」
「分かった……」
俺が見ている前で、雪華は友哉の布団をはぎ、ぺらぺらの患者服をはだけさせて、胸をあらわにしていく。その体に残る傷跡を見て、痩せた手が一瞬止まったが、雪華はそれについて何も言わなかった。
ギスギスした指が友哉の顎にかかり、少し上を向かせる。
「あらかじめ言っておくが、この子の口を開けて息を吹き込むぞ」
「いいよ。ミコッチだって人工呼吸してくれたし、そんなことで怒ったりしない」
「さっきの少年か。あれは珍しいものだな」
「分かるの?」
「ああ、あそこまでフラットな人間には初めて会った。あの少年が息を吹き込んだおかげで、この子も命拾いをしたわけだ」
「命拾いをしたのはあんたらもだけどね」
あの場で友哉が死んでいたら、俺は何をしたか分からない。
「そうだな」
雪華は無表情にジャケットを脱いで、ソファにかけた。
「お前は部屋を出ていてくれ」
「は? そんなこと出来るわけないでしょ」
「今から部屋の空気を浄化する。お前は不浄の存在だ。近くにいられると困る」
ぐいと強引に体を押される。
「狼と狐のどこが違うんだよ。あんただって不浄の存在じゃないのか」
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