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3-(5) 永遠に続く夜
「え、あの、友哉、何言ってるの? 冗談だよね?」
まさかという疑念が頭をもたげ、強く打ち消しても、また蛇のようにぞろりと背中から這い出してくる。
「友哉、こっち見て。俺を見て」
友哉は途惑ったように目を開いているけど、その焦点が定まらない。
両手で友哉の頬をつかんで、まっすぐ目を合わせる。
「ほら、見えるでしょ。俺、目の前にいるよ」
友哉の瞳が不安そうに左右に揺れる。
その呼吸が少しずつ早くなっていく。
「あきら……悪い冗談はやめて……明かりつけてくれ……」
友哉の声が不安に震え出す。
「明るいよ……友哉、ここは明るいよ……」
俺の声も泣きそうに震えてくる。
「うそ……」
小さく呟いた後、友哉はぶるぶると頭を振った。
「うそだろ」
友哉は恐る恐るというように両手を前に出し、俺の胸にぶつかると手探りで肩や首や顔をぺたぺたと触って来た。
その手があまりに弱々しくて不安そうで頼りなくて。
「見えない……。あきら、見えない。こんなに近くにいるのに、あきらが見えない……」
「いやだ!」
俺は友哉に体当たりするように抱きついた。
「やだやだやだ、こんなの嫌だ!」
背中に手を回し、強く強く抱きしめる。
「どうして、友哉、どうして? 嘘だよね? ほんとは見えてるよね? ねぇ友哉!」
友哉の手が震えながら俺の服をつかんだ。
「あきら……」
「いやだよ。友哉、俺を見てよ!」
友哉の肩越しに雪華を見る。
雪華は愕然とした顔で口を開けている。
「……これ、どういうこと?」
問うと、雪華は力なく首を振り、諦めたように頭を垂れた。
一番の使い手などと言っておいて、失敗したということか?
「どういうことなんだろうな……」
雪華の存在に気付いていない友哉は、自分が聞かれたと思ってそんなことを言う。どこか人ごとみたいな、上の空のような口調で。
「『あれ』に目を食べられちゃったのかな……」
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