(2)わたし、カリン、今あなたの後ろにいるの

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「おいあきら、暑いって」 「ご、ごめん……でも離せない」 「え、なんで」 「うわ、ちょお! ま!」  あきらが変な声を出して、俺の体を抱えるように一歩下がる。 「あきら……?」 「うわー、マジか、もう信じらんない!」 「どうした?」 「ああー……俺も山川さんを笑えないや。ちょっと、っていうかかなり幻覚っぽいものが見えてる」 「そうなのか?」 「めちゃくちゃ怖いから、くっついていてもいい?」  大雅と朧はなぜか楽し気に口を開けて、その場でぴょんぴょん跳ねている。 「怪奇現象なんて何度も見ているのに、まだ怖いのか」 「うん、ちょー怖い。これは今までで一番怖いかも」  耳元であきらの速い呼吸が聞こえる。俺はその背中をポンポンと叩いた。 「そうか。じゃぁくっついて行くか」 「うん、友哉ありがと」  横から抱きついたかっこうのままで、あきらは俺を押すようにして二歩だけ進んで止まった。 「あ、ここ10センチの段差」 「靴は」 「とりあえず土足で行こうよ。いざという時走れないと困る」 「でも」 「後で絶対掃除するから」  必死に言われ、仕方なく土足のまま上がる。 「間取りは?」 「ここからリビングまで廊下が伸びていて、わっ!……右に洋間が二つ並んでいて、左に、うぉっと! 左に、トイレとか風呂とかがあるんだけどぉ! ぎゃっ」  話しながらあきらは俺ごと体を右に寄せたり後ろへ下がったり、頭を押さえつけて身を低くしたりする。  いったいどんなものが見えているんだろう。 「はぁ……はぁ……」  耳元にあきらの息がかかる。 「汗びっしょりだな、あきら」 「うん……幻覚無限増殖状態、すごい、ヤバイ」 「まじか」 「まじ。幻覚だと分かっていても、触れてしまったらどんな影響があるか分かんないし」 「まぁ実際に6人が行方不明になっているんだしな」 「やっぱり何かの呪いなのかな。そういうのを解明するのは絶対ハルの方が得意なのにー」 「引き受けてしまったんだから、言ってもしょうがないだろ」 「うう、ごめんね、友哉」 「いいよ。それより近田さん夫婦と横山さんがそっちの方で一緒に座っているぞ」  女の子二人から少し左にずれたところに、その三人が見えた。
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