3-(5) 永遠に続く夜

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「え……? 俺、笑っているか?」 「うん……」 「俺さ……一乃峰で倒れたところから記憶が途切れているんだ。やっぱり境界線を越えたから『あれ』に襲われたってことだよな」  俺はまた友哉にギュッと抱きついた。  その肩越しに雪華を睨む。  雪華は蒼ざめた顔でこちらを見ていた。  殺される覚悟は出来ているようだった。 「そうだよ。また友哉が俺を守ってくれた。俺が友哉を守るって言ったのに……」 「あきらは無事なのか? 怪我は?」  今はそれどころじゃないのに。  俺より友哉が大変なのに。  どうしていつも友哉は……。  俺はしゃくりあげながら答えた。 「無事だよ……怪我も無いよ……でも友哉が……う、うう……」  また涙が出てきて止まらない。  今腕の中にいる友哉はとても細くて儚げだった。ちょっと前まで俺と友哉はほとんど同じ体型だったのに、それだけ俺が成長したんだろうか、それとも友哉が痩せてしまったんだろうか。 「うっ、うっ、ともやぁ……」  友哉はふうっと息を吐いた。なぜかその溜息には、怖さもつらさも苦しさも悲しさも悔しさも、そういったものは何ひとつ含まれてはいなかった。 「良かった……」 「え」 「あきらが無事で、良かった」  俺は聞き間違いかと思って、体を起こして友哉の顔を見た。  友哉はまた長い息を吐いて、少しだけ口角を上げた。それはまるで、やるべきことを成し遂げた後のような満足感と達成感と安堵感の混じった顔だった。 「俺、あきらのそばにいられて良かった。……あきらを守れて良かった」  友哉がこぶしを握って、差し出してくる。  俺は震える手を必死に握って、そこにコツンとぶつけた。  指を軽く握り合って、手のひらを合わせる。  コツン、グッ、パチン……友情の証。  体中がじんわりと温かくなって、嫌なものが全部溶けていく。  友哉を完全に治せなかった雪華も、大賀見とかいう狼憑きの家も、その家に関わるこの地域の有力者どもも、全部全部殺してやるつもりだったのに。  友哉が俺の中の殺意も恨みも憎しみも、すべてを溶かして流しちゃうから。
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