3-(5) 永遠に続く夜

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「友哉お兄ちゃん……ありがとう」  俺が抱きつくと、友哉は耳元でふふっと小さく笑った。 「今の『お兄ちゃん』が、一番『お兄ちゃん』という実感がこもっていたな」 「そんなこと無いよ。いつだってちゃんと『お兄ちゃん』って思ってた」 「そうかぁ?」 「そうだよ」 「はは、そうか……」  友哉が急に、体重を預けるように寄り掛かってくる。俺はその体がずり落ちないように慌てて支えた。 「友哉、大丈夫?」 「ごめん、あきら。なんか眠くて……」 「うん、眠っていいよ。ゆっくり休んで」  俺はそっと友哉の体をベッドに横たわらせた。はだけた患者服の前をあわせて、布団を肩までかぶせる。 「お休み、友哉」 「あきら……ちょっとお願いなんだけど」  友哉は不安そうに目を泳がせた。 「うん、なに?」 「あのさ……ちょっと恥ずかしいんだけど」 「なに、何でも言ってよ」 「その……俺が眠るまで、しばらく手をつないでいてくれるか」  友哉が片手を布団から出して少しだけ持ち上げた。俺はその手に飛びつくようにして握りしめた。 「つないどくよ。ちゃんとつないどく」  声が震える。  我慢できずにまた涙が溢れる。  いつも友哉は大人ぶっていて、絶対にこんなこと言ったりしないのに。 「ありがとな……」  呟いて、友哉は目を閉じた。  つないだ指の力が徐々に抜けていく。 「友哉」  俺の涙が、ぽた、ぽた、とその手の上に零れ落ちた。
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