(2)わたし、カリン、今あなたの後ろにいるの

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「え、なんでその組み合わせ? しかも座っているの? 体育座り?」 「いや、食卓か何かに座って談笑している風に見えるな」 「ええっ、テーブルなんて無いのに」 「近田さんが住んでいた時のままじゃないのか?」 「ううん。三人が失踪して1年間は信夫さんの親が家賃を払い続けたらしいけど、一年経っても見つからないから結局家具と荷物は全部引き払って賃貸契約も解除したんだって。だから、中は今空っぽだよ」 「からっぽ」  じゃぁ、俺に見えている食卓のようなシーンは幻なのか?  夫婦と横山はまるで親子みたいに穏やかな顔で笑っている。 「とりあえず、分かった。ここの洋間とリビングダイニング以外に、幽霊はいないんだね」 「うん、いない」 「琥珀(こはく)翆玉(すいぎょく)、つゆくさ」  あきらはさらに三匹の狼を呼んだ。 「あきら、だめだ。狼がいっぱいいるとあの人達がびっくりしちゃうから」 「大丈夫だよ。リビングと洋間には行かせないから」  三匹がぱっと三方に散っていく。大雅や朧と同じように楽しげに跳ねながら。  104号室に入ってから6人の幽霊はかなりはっきりと見えてきたし、いつもは真っ暗な視界の中に銀色の狼が5匹も走り回っている。  今、あきらには怖いものが見えているようなのに、俺にとってはいつもより賑やかな光景が見えているから、何だか変な感じだ。 「友哉、まずはどうする?」  肩を抱くようにしてあきらが耳元に聞いてくる。  俺は右のパジャマの子の方を向いた。 「とりあえず近くから行こう」 「分かった。じゃぁ洋間のドアを開くよ」  カチャ、とノブを回す音が聞こえた。  新築なのでもちろん、ギギギーなどと軋んだりはしない。  正直に言えば歩きづらいが、あきらにくっつかれたままでパジャマ姿の女の子に近づく。 「こんにちは」  呼びかけに答えはなかった。うずくまった彼女の前に回り込んでみても、顔を伏せていて見ることが出来ない。 「近田花梨さんか?」  反応は無い。 「ええと違ったか? 遠野芽衣さん? それとも中沢瑠衣さん?」  女の子の体が小さく震え出した。 「え……」 ―― う……うぅ……。  かすかな嗚咽が聞こえてくる。  泣いているのだ。
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