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「どうした?」
「えっと、大賀見神社って、雪彦さんの家に関係ありますか」
「ああ、本家の敷地内にある小さな神社だが、それが何か」
「俺の部屋にその神社のお札があったんです。もう捨てちゃいましたけど」
「捨てた?」
「はい」
あきらが嫌がっていたものだから、ビリビリに破いて捨ててしまった。
「そうか、君はあれを捨てたか」
面白そうな声がして、ぽんぽんと軽く肩を叩かれた。
「あの、やっぱりあれは、一族の誰かがあきらを呪うためのものだったんですか」
「一族の誰か?」
「はい、あきらを邪魔に思う誰かが呪いをかけていたんですよね」
「あ、ああ……」
雪彦はちょっと迷うように言葉を止めて、また俺の肩に手を置いた。
「ああ、その通りだ。証拠が無いから犯人が誰かは分からないが、あきらは跡継ぎ争いに巻き込まれたらしい」
「もう大丈夫なんですか? またあきらが狙われるようなことは……」
もしまた同じようなことがあっても、今の俺ではあきらの盾になれるかどうかも分からない。
「大丈夫だ、もう心配はいらない。すぐに食事を用意させるから、食べながら話そう」
その時、タイミングを計っていたかのようにドアが開く音がして、「失礼します」と女性の声が言った。カチャカチャと食器の鳴る音と滑らかな車輪の音、それから静かな足音が二人分聞こえてくる。
あきらが話題を変えるように、周囲の説明を始めた。
「えっとね、ここはダイニングで中庭側がガラス張りになっていて、俺達は中庭の方を向いて座ってるんだよ。で、おじさんの席は俺達から見て左側のお誕生席で、あと家政婦の山田さんと佐藤さんがワゴンで食事を運んでくれてるよ」
「山田です」
「佐藤です」
上品な感じの女の人の声が聞こえて、俺はそっちに頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「二人はリクエストすると何でも作ってくれるんだ。しかもチョー美味しいんだよ。で、ここから見て右の奥の方にキッチンにつながるドアがあって、左の後ろの方には廊下につながるドアがあるんだ。キッチンへ行くと、おやつがもらえるよ」
「まぁ、あきらさん」
女性のクスクス笑う声がする。
まだここに来たばかりのはずなのに、あきらはもうすっかり馴染んでいるようだった。
誰にでも好かれる性格だから、みんなにかわいがられているんだろう。
女の人達が俺のすぐ近くに来て配膳している気配がする。動くとぶつかりそうだったので、俺はじっと終わるのを待った。
「さぁ、冷めない内にどうぞ」
雪彦に言われてテーブルに目をやり、俺は動きを止めた。
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