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「は? どうって……いつも俺に覆いかぶさって、盾になってくれて」
どんなに痛めつけられても、絶対に俺から離れずに、腕を振り回していた。
「友哉君は、私の作った呪詛までも防いで見せた。あんなことが、普通の人間にできるはずがないんだ」
「呪詛……? 何が言いたいの?」
「友哉君は自らの魂を削るようにして霊力に変えている。そうやって、文字通りに身を削りながらあきらを守っていたんだ。あの子の魂には相当なダメージが蓄積している。そうでなければ視力を失うことも無かった」
「は……? なにそれどういうこと? もう一回言ってみて」
雪華に飛びついて、俺はその胸ぐらをつかんだ。
「結界が破られた時に発動したあの術は確かに強大な術だった。十年以上かけてこつこつと大きくしていったものだったからな。だが、友哉君の目が見えなくなったのはそれだけのせいじゃない。十年間、回復する暇もないくらいに魂を削って戦っていたんだ。そのせいで、すでにひどく弱っていた。あの子の、体も、魂も」
胸ぐらをつかんだまま背の高い雪華を下へ引っ張り、顔と顔を近づける。
「雪華の蘇生の術がへっぽこだったせいじゃないのか」
「そう思うなら私を殺してくれてかまわない。だが、ただの人間である友哉君と、すぐに回復する半妖のお前とは根本的に違うことを忘れるな。友哉君は見た目以上に弱っているぞ」
「そんなに、弱っているの……?」
「ああ。あの子はあまり長生きしないだろうね」
「あまりって、どのくらい?」
「正確には分からないが、あと五年かもしれないし十年かも知れない。そうだな、がんばっても二十年……三十年は無理だろうな」
まだ16の誕生日も迎えていない俺にとっては十年後も三十年後もまだかなり先のことのような気がする。
でも。
「俺は、どのくらい生きる?」
「あきらは半分あやかしだからね、おそらく遥かに長く生きるだろう」
「遥かにって」
「数百年から千年ほど」
「冗談」
半笑いで返したけれど、雪華は真面目な顔をしていた。
「妖狐ならそのくらい生きても不思議はない。あきらは半分人間だからそこまでではないかも知れないが。どちらにしても友哉君よりは、遥かに長い寿命がある」
そんなことを言われても全く現実感が無い。俺と友哉はずっと一緒に育ってきた。この先の時間が違うなんて考えたことも無かった。
「あきらは自分が死ぬ時には友哉君を道連れにするようなことを言っていたな」
「だからなんだよ」
「逆はどうなんだ? 友哉君が先に死んでしまった時、おまえはどうするつもりだ」
俺はつかんでいた雪華の服を離して、一歩後ろに下がった。
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