4-(3) きれいな人

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 雪華を見ると、少し困ったような顔をした。 「あやかしを生きているか生きていないか論じるのは難しいな。この世界の生き物ではないが、数が増えたり減ったりするので繁殖はするのかもしれない」 「へぇ、繁殖ってことは雄とか雌とかあるの?」 「あるかも知れないが、彼らは体の隅々までは見せてくれないんだ」 「えっと、じゃぁ食べ物とかは?」  雪華は言葉に詰まり、ポソリと言った。 「雑食だな」 「雑食」 「何でも食べる」  言いにくそうにされると、余計に気になる。 「なぁに? まさか人の肉とか?」 「ん、人の肉も食べることは出来るが、霊魂の方を好むかな」 「霊魂……。幽霊のこと?」 「ああ、幽霊でもあやかしでも魔物でも妖怪でも、まぁエネルギーになるものは何でも食べるな」 「あやかしと魔物と妖怪ってどう違うの?」  雪華は肩をすくめた。明確な違いは無いということか。 「大賀見の血族ってみんな式狼を持っているの?」 「外部から嫁いできた者や、血の薄い者は持っていない。だが、式を使えなければ一人前とは認められないので、親戚同士で婚姻する者が多いな」 「大賀見家にとって狼って大事なんだね。途中で狼を失うことってある?」  雪華はぎくりと身を硬くした。 「あるんだ?」 「ああ……」 「狼を失ったらどうなるの?」 「それは一族にとって大きな恥であり危機だ。大賀見の家は式狼の力で繁栄してきた。力の拠り所を失えば、一気に没落するだろう」 「なるほど」  俺はにんまりと笑った。 「雪華。一族の狼持ちを全部リストアップしてよ。名前、住所、資産、それから術ってやつをどの程度使えるのかも、すべての情報を俺に寄越して」 「そんなものを何に使うんだ」  床に座った俺を見下ろす雪華の顔は蒼い。  きっと俺が何を言うか予想がついているだろう。  俺はその予想通りのことを言ってやった。 「あいつら、友哉の目から光を奪ったんだよ。この屋敷とあれっぽっちの金で終わったことになるはずがないでしょ?」 「大賀見家を潰すつもりか」 「だとしたら?」 「そんなこと、友哉君は望んでいないだろう」 「かもね。でも、雪華は望んでいる」 「はっ……なにを言うか……」 「雪華は友哉の視力を奪ってしまったことを後悔しているし、そんなことを命じた大賀見家も許せなく思っている」 「そんなことは……」  俺が世界を滅亡させると言っても顔色一つ変えなかった雪華が、分かりやすく動揺した顔をした。 「雪華は友哉に魅かれているから」
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